結局大和に相談するかどうかはあやふやなまま、七海は弁護士事務所から大和のマンションに。
紹介してくれた大和が反対するわけもなく、七海の働き先はあっさりと決まった。
派遣登録していた会社はエントリー停止に。
今日もらった雇用条件を眺めていたら、パン屋とコンビニを合わせた金額よりも月々の収入が多くなりそうなことに驚いてしまった。
「こんなにいいところで働けるの……?」
事務所はここからたった二駅。駅からすぐで、勤務時間は9時から17時。昼休憩も1時間あり、残業代も別。
派遣の時よりも条件が良い。
がんばろう。少しでも長く働けるように。
双子を妊娠中の佳奈美の説明はわかりやすくて、七海はすぐにスケジュール表に入力できるようになった。
電話やメールも徐々に任せてもらえるようになり、2ヶ月後、佳奈美は笑顔で産休に入っていった。
◇
「七海ちゃん、今日から来るインターンくんにしばらく電話を取ってもらうから、サポートよろしくね」
「はい! がんばります!」
「七海ちゃんは、がんばらなくていいんだよ」
がんばるのはインターンだと笑われた七海は、「そうでしたね」と照れ笑いした。
「何時に来るんですか?」
「そろそろ……あぁ、来たんじゃないかな?」
すりガラスの向こう側に黒っぽい服を着た男性の姿が現れる。
「……え? 真くん……?」
「七海? なんで?」
お互いに見覚えのある顔に驚いた七海と真は、信じられないと目を見開いた。
「あれ? 知り合い?」
「今日から1ヶ月、インターンでお世話になる森口真です。斎藤七海の親戚です。よろしくお願いします」
真は七海のいとこ。
高校卒業までお世話になっていた親戚の家の息子だ。
ずっと優秀で、弁護士を目指して大学に行ったけれど、本当に弁護士になるんだ。
夢を叶えるってこういうことだろう。
「すごいね、偶然?」
「はい。偶然です。七海に会うのは3年ぶりなので」
大学に通うため、真が一人暮らしを始めた3年前が最後だ。
その翌年に高校を卒業した七海が家を出たので、疎遠になってしまった。
それなのに、偶然会えるなんて。
「七海、おまえ今どこに住んで……」
「真くん、まず仕事!」
「あとで絶対教えろよ」
真は説明を受けるために西九条と打ち合わせ室へ。
待って。どこに住んでいるか、どうやって説明するの?
大和と暮らしています?
言えるわけないよ!
ただのルームシェアだけれど男性と二人暮らしなんて、叔母さんたちにバラされたら困る。
これはマズい。どうしよう。
七海はあれこれ言い訳を考えたが、素晴らしいアイデアは何も浮かばなかった。
仕事中は聞かれることはなく、夕方は飲みに行くぞと真が連行されていったのでセーフ。
でも明日からどうしよう。
絶対に聞かれるよね。
なんて答えればいいの?
翌朝、悩みすぎてなかなか眠れなかった七海の前に現れた仁王立ちの真に、思わず七海は後ずさりした。
「男と同棲中ってどういうことだよ、七海!」
「な、なんで知って……」
七海はパッと西九条を見る。
西九条は気まずそうに視線を七海から外した。
しかも、西九条だけではない。事務所のみんなが七海と目を合わせないようにしている。
弁護士さんたち、守秘義務は?
個人のプライバシーは?
「すぐにその家を出ろ」
「そんなこと真くんに言われる筋合いない!」
「住むところがないなら俺が学生寮からマンションに引っ越すから一緒に」
「なんで大和さんはダメで、真くんならいいの!?」
おかしいよ、とツッコむ七海に、真は盛大な溜息をついた。
「勤務先の弁護士のマンションに転がり込むなんてどうかしてる」
「なんの話?」
「ここの弁護士なんだろ、その大和ってやつ」
「お医者さんだけど?」
まったく嚙み合わない話に七海と真は顔を見合わせ、西九条は手で額を押さえた。
紹介してくれた大和が反対するわけもなく、七海の働き先はあっさりと決まった。
派遣登録していた会社はエントリー停止に。
今日もらった雇用条件を眺めていたら、パン屋とコンビニを合わせた金額よりも月々の収入が多くなりそうなことに驚いてしまった。
「こんなにいいところで働けるの……?」
事務所はここからたった二駅。駅からすぐで、勤務時間は9時から17時。昼休憩も1時間あり、残業代も別。
派遣の時よりも条件が良い。
がんばろう。少しでも長く働けるように。
双子を妊娠中の佳奈美の説明はわかりやすくて、七海はすぐにスケジュール表に入力できるようになった。
電話やメールも徐々に任せてもらえるようになり、2ヶ月後、佳奈美は笑顔で産休に入っていった。
◇
「七海ちゃん、今日から来るインターンくんにしばらく電話を取ってもらうから、サポートよろしくね」
「はい! がんばります!」
「七海ちゃんは、がんばらなくていいんだよ」
がんばるのはインターンだと笑われた七海は、「そうでしたね」と照れ笑いした。
「何時に来るんですか?」
「そろそろ……あぁ、来たんじゃないかな?」
すりガラスの向こう側に黒っぽい服を着た男性の姿が現れる。
「……え? 真くん……?」
「七海? なんで?」
お互いに見覚えのある顔に驚いた七海と真は、信じられないと目を見開いた。
「あれ? 知り合い?」
「今日から1ヶ月、インターンでお世話になる森口真です。斎藤七海の親戚です。よろしくお願いします」
真は七海のいとこ。
高校卒業までお世話になっていた親戚の家の息子だ。
ずっと優秀で、弁護士を目指して大学に行ったけれど、本当に弁護士になるんだ。
夢を叶えるってこういうことだろう。
「すごいね、偶然?」
「はい。偶然です。七海に会うのは3年ぶりなので」
大学に通うため、真が一人暮らしを始めた3年前が最後だ。
その翌年に高校を卒業した七海が家を出たので、疎遠になってしまった。
それなのに、偶然会えるなんて。
「七海、おまえ今どこに住んで……」
「真くん、まず仕事!」
「あとで絶対教えろよ」
真は説明を受けるために西九条と打ち合わせ室へ。
待って。どこに住んでいるか、どうやって説明するの?
大和と暮らしています?
言えるわけないよ!
ただのルームシェアだけれど男性と二人暮らしなんて、叔母さんたちにバラされたら困る。
これはマズい。どうしよう。
七海はあれこれ言い訳を考えたが、素晴らしいアイデアは何も浮かばなかった。
仕事中は聞かれることはなく、夕方は飲みに行くぞと真が連行されていったのでセーフ。
でも明日からどうしよう。
絶対に聞かれるよね。
なんて答えればいいの?
翌朝、悩みすぎてなかなか眠れなかった七海の前に現れた仁王立ちの真に、思わず七海は後ずさりした。
「男と同棲中ってどういうことだよ、七海!」
「な、なんで知って……」
七海はパッと西九条を見る。
西九条は気まずそうに視線を七海から外した。
しかも、西九条だけではない。事務所のみんなが七海と目を合わせないようにしている。
弁護士さんたち、守秘義務は?
個人のプライバシーは?
「すぐにその家を出ろ」
「そんなこと真くんに言われる筋合いない!」
「住むところがないなら俺が学生寮からマンションに引っ越すから一緒に」
「なんで大和さんはダメで、真くんならいいの!?」
おかしいよ、とツッコむ七海に、真は盛大な溜息をついた。
「勤務先の弁護士のマンションに転がり込むなんてどうかしてる」
「なんの話?」
「ここの弁護士なんだろ、その大和ってやつ」
「お医者さんだけど?」
まったく嚙み合わない話に七海と真は顔を見合わせ、西九条は手で額を押さえた。



