「遅くなってごめ〜ん」


純恋はさぞ当たり前のように、その輪の中に入っていく。

そして、一人の女の子と少し話してから私を手招いた。


「陽葵〜、早く!」


私のことを大きな声で呼びながら、にこにこと笑っている。

もともとベンチにいたメンバーも、私の方を向いている。


「う、うん」


絶対に聞こえるわけのない小さい声で返事して、私は小走りで駆け寄った。


「朝比奈さ〜ん!ここ座って」


すると、クラスのムードメーカー、南條(なんじょう) 七海(ななみ)さんがベンチの空いている方の隣を手でポンポンと叩く。

私は「ありがとう」と小さな声で言いながら、そこに座った。


「七海、やっさし〜」


南條さんを挟んでもう反対側の隣に座っていた、クラス1元気な、久遠(くおん) 愛乃(あいの)さんがニヤニヤと笑いながらそう言う。


「こらこら、からかわない」


優しく穏やかな、高森(たかもり) あさひさんが笑いながら久遠さんにそう言った。


「ようこそ、だね。朝比奈さん」


クラスのおしゃれ番長、一ノ瀬(いちのせ) (れい)さんが、メガネを上げながら微笑む。


「はっ、はいっ!えっと…朝比奈 陽葵ですっ!よ、よろしくお願いします」


一ノ瀬さんの言葉にばっと頭を下げると、おでこを膝に勢いよくぶつけてしまった。


「えっ、大丈夫?」

「それな。今めっちゃすごい音したけど」


隣の南條さんとその隣の久遠さんが、おでこを擦りながら頭を上げる私に声をかけてくれる。


「てか、名前くらい知ってるから大丈夫だよ」

「そーそー、学級委員長の朝比奈 陽葵ちゃんでしょ〜?」


高森さんと一ノ瀬さんがクスクスと笑いながらそう言った。


「逆に、このメンバーの名前知ってる?陽葵」


純恋が心配そうな顔をしながらも、そう聞いてくる。