どこもかしこもAsteria-アステリア-の新人がクラスメイトだと大騒ぎだ。デビューまでのカウントダウンがツイートされていた。


『Asteria-アステリア- 新人所属』

『期待の新人は当社最年少の高校生!』

『デビュー日まで、毎日19時にキービジュアルを少しずつ公開します!』


澪もまだ教えてもらっておらず、毎日更新される内容を見ていた。個人のSNSは開設されたらしいが、名前こそあるもののまだアイコンは初期のまま。デビュー日に顔、ユニット名、キービジュアルの全貌が公開されるらしい。


澪「気になるなぁ……」


ついに明日、デビュー日を迎える2人。
それに対して当の本人達はいない学校は、本当に静かだ。
教室に覗きに来る女子生徒もいない。
告白があるであろう呼び出しに駄々をこねる2人もいない。
澪にはもちろん女友達がいる。常に3人ではないものの、あの2人が巻き起こす嵐のような賑やかさがもはや常になっていた。

女子達はクラスメイトの芸能界入りにキャーキャー言っていたのもたった数日で、今はSNSでの情報を見たか見てないか程度の会話しかしていない。


澪『クラスメイトが芸能人ってこんな気持ちなのか……』


少しパサついてしまった卵焼きを口に放り込み、外を見る。

ブブッ

机の上でスマホが存在を主張し始めた。DMかネットのクーポン情報だろうと思っていたが、ポップアップには「環」の文字。
開いてみると、いつもの環の様子が伺える文面でこう書かれていた。


『今日、オレんち来て!!』


澪「……なんだろ?というか、ホントいつまで経っても内容書かないんだから…」


文句は言いつつ、久しぶりに友人と会えると思うと自然とニッコリしてしまう。


澪『早く放課後にならないかなぁ』


ゆっくり過ごせる時間があと僅かだということを、この時の澪はまだ知らなかった。