はぁ…。
チャンスを逃したくないからって、いきなり勉強教えるとか…俺、距離の詰め方完全にミスったよな。
やべぇ、緊張する。
篠原のこと、最初は似てるなって思うくらいだったのに。
あいつが‟あの子”だって確信してから、余計どうふるまえばいいかわからなくて、冷たくしてしまって悲しんでると変に慌てて余計あいつを困らせるし。優しくしようとすると男どもから「お前、急にどした?」って言われるし。
それに、あいつは俺のことを覚えていないし、今の俺を好きでもない。
だから、今好きって告るわけにはいかない。俺が、落としてから…あいつに言ってほしい。
俺のこと、思い出せなかった、罰だから。
 当日…
日曜の休みだから制服で図書館行くわけにはいかねーよな…。
私服っつっても、チェック柄の長袖か、シンプルな白一色の長袖に上着を羽織るか、紺色のズボンか水色のズボン…。
女みてぇにこんな洋服に時間がかかるなんてな。
約束の十時までにはあと二十分あるけど…間に合うか?
図書館までは徒歩五分。
あれ、俺髪はねてね!?
クッソ、時間ギリギリになるにつれて気になる部分が増えてく。

なんとか持ち物と着る服を決め、寮を飛び出る。
図書館につくと、十時ジャストなはずなのに、篠原がもうついていた。
「わりぃ!遅れた」
時間ぴったりだと逆に待たせちまうのか。
「ううん、大丈夫。広瀬くんこそ、走ってきたの?ゆっくりでいいよ」