「確かに、私に恋人がいようと私の価値が揺らぐことはないわね。そのカモフラージュ彼氏作戦とやらに興味が出てきたわ。うまくいかなかったら即座にあなたを切るから、そのつもりでいてくださる?」
私は彼の差し出した手に手を添えながらいった。

「俺のことも名前でお呼びください。彼氏風に呼び捨てにしてくれて構いませんよ。ちなみに、本当にクラスメートの名前を誰も覚えてないんですか?」

彼が私の添えた手を握りながら、握手して来る。
てっきり私をエスコートしてクラスまで連れていくものだと思っていたので拍子抜けした。
アカデミーに来て初めて女扱いされず驚くと同時に、初めて友達ができたようで嬉しかった。

「私だって覚えている人はいるわよ。金髪碧眼の王子様、レナード・アーデン侯爵令息とかね」
私は彼の手を握り返しながら言った。

「ブッブー!クラスメートどころか学年も違います。もう、俺だけ覚えとけばよいですよ。ミリア」
子爵令息である彼が公女の私を呼び捨てにしてきたことに驚きつつも、その方が恋人に見えるかもしれないと思い許した。