「手助けって、あなたに私を助けられることなんて何もないけど? そもそも、あなたは誰? クラスにいた気はするけれど」

私は全くクラスメートを覚える気がなかった。
変に馴れ合ってしまって、公爵になった時足かせになっては困る。

「周りはみんな詐欺師だと思え」それが父の教えだった。
だから、当然彼も私を利用しようと近づいてきていると思った。

「サイラス・バーグです。バーグ子爵家の跡取りです。やはり、ミリア様はクラスの誰も覚える気がないのですね」

私が失礼な態度で接しているのに、彼は意にもかえさなかった。
私にはない彼の自信に溢れた瞳が気になった。

「ミリア様って、勝手に人の名前を呼ぶなんて失礼じゃないの?」
私は自分の素っ気ない失礼な態度を棚に上げて彼を責めた。

「でも、今、世界にカルマン公女は2人います。だから、ミリア様と呼ばせてください」
心臓が跳ねて、心に闇がかかっていくのが分かった。
帝国でカルマン公女といって、一番にみんなが思い浮かべるのは姉であり私ではない。

だから、私はたった1人のカルマン公爵になりたいのだ。
女性初の公爵になって私の存在を示したい。

「勝手にしなさい。バーグ子爵令息。あなた程度の人間が私を助けられるって勘違いも甚だしいけれど、何か考えがあるなら聞いてあげてもよくってよ」

私は自分で言っている言葉に驚いてしまった。
いつもの私なら関わらないように、突き放す言葉を吐いて彼を遠ざけたはずだ。