「招待客ではないと思います。首都の貴族でもありません。列席者の多さに皇宮のセキュリティーが甘くなっているかもしれないです。遠くてよくみえないのですが、何か持ってませんか?」

彼の言葉に怖くなる。
皇帝の暗殺を計画している誰かだったらどうしよう。

父が暗殺者を雇っていて、私の結婚式を利用してラキアス皇帝陛下を暗殺しようとしていたらどうしよう。

今の皇帝陛下の政治的な方向性は、他国をどんどん侵略したい父のものとは真逆だ。
争いが苦手なラキアス皇帝陛下は、戦争をしようとせず外交で物事を解決しようとする。

外交でうまく解決できなくて戦争になるのが嫌だったのか、先月領土を他国と争った時は明け渡してしまっていた。

私はてっきり姉が父の意向に沿った政治を皇帝陛下にさせるものだと思っていたのにそうではなかった。
皇帝陛下は姉の贅沢にはどれだけでも金をかけている。
皇后宮もまだ補修で使える状態なのに少女趣味の豪華な宮殿に立て替えたことで反発があった。

それでも、ラキアス皇帝陛下はひたすら姉の味方だったらしい。
お子様がいないことで側室を入れるように言われても無視して、ひたすらに姉だけを愛した。

父が皇帝暗殺を試みていたらどうしたら良いのか。
隣で列席者に挨拶をしながら、レナード様が私の震える手を隠すように握ってくれた。

「ミリア、あの方は格好はドレスですが、髪型が踊り子のものではないですか?前にミリアのウィッグの試作品で見せてもらったものと似ています。それと、お子様を抱きかかえている様にもみえるのですが。」
私が目をこらすと確かにあれは子供だ。

遠くの方で騒ぎが起こっているのがわかった。