30年ほど前で彼女の父がカルマン公爵になったばかりの頃だったはずだ。
その噂が真実だとしたら、過去のものでも皇族殺しとしてカルマン公爵家は親族もろとも処刑される。
ミリアも当然処刑されるだろう。
彼女はいつ処刑されるかも分からない帝国にいるのが怖くて仕方ないのだ。
レナード・アーデンに恋心を抱きながらも、彼を知ろうとすると彼の能力の高さが分かってしまって自分の家を滅ぼし自分を殺せると思って怖がっている。
「それからね⋯⋯」
彼女の話がまだまだ続きそうなことに思わず、語りを止めた。
「ちょっと待って、結婚したら終わりじゃないの? その物語は!」
「どうして、結婚したら死ななきゃならないの? 私は草を食べてでも生きてくわ。お母様の恩に報いなければならないのよ」
俺は彼女が童話のような物語を語り出したので止めたが、彼女はそのことに少し怒ってしまった。
「ミリアのお母上って。ミリアに何かしてくれたの?」
彼女の母は彼女が赤い色の瞳をしていたことに絶望し引きこもっていると言う話は誰もが知っている。
正直、恩を感じるポイントが分からない。



