残された私は酷く虚しい気分になった。
ラキアス皇帝だって美しい美男子だが、今、2曲目を姉と踊っている。
2曲連続でレナード様が私と踊れば、周りの令嬢も少しは遠慮してくれたのではなかろうか。
婚約者や妻とは2曲連続で踊ったりする人だっている。
それにより2人の間柄が形式的なものだけではないと、周りは感じたりもするのだ。
惨めな気持ちに今すぐこの場を立ち去りたいが、まだ姉にお祝いのご挨拶さえできていない。
姉がお手すきになるのを見計らって、挨拶に行き今日はもう帰宅しようと思った。
私は舞踏会のいつもの定位置、壁際に移動しようと一歩足を踏み出した。
「ミリア・カルマン公女、あなたと踊れる幸運を私に頂けませんか?」
その時いつも私を助けてくれた聞き慣れた声がして振り向いた。
そこには気まずい別れなどなかったかのように、微笑んで手を差し出してくれるサイラスがいた。



