私はお手伝いさんが花瓶に生けようとするのを断り、いつも無造作にベッドサイドに花束を置いていた。

 玲さんが来訪した時に枯れゆく薔薇を見れば、また新しい花束を持って私に会いにくると思っていたからだ。
 私は彼への恋心は冷めていても、唯一私を見捨てずにいてくれる彼に依存していた。
 おそらく私のそういった行動を利用され、薔薇の花束にカメラを仕込まれ監視されていたのだろう。

(そうだ、おそらく学生鞄にも盗聴器とか隠してあるはず⋯⋯)
 私はカッターを用意し学生鞄を切り裂く。
 カバンの底はいつの間にか二重構造にされていて、盗聴器らしきものが仕込まれていた。