泣きそうになりながら、家路につこうとタクシーを呼ぼうと道路で待っていたら見覚えのあるシルバーの外車が止まった。

 「凛音、お疲れ様。家まで送るから乗って」
 優しい声色、芸能人に勝るとも劣らぬルックス。
 神が悪戯で作ったように何もかも持っている私の婚約者だ。

「玲さん、迎えに来てくれたんだ⋯⋯ありがとう」
 私は初めて彼にお礼を言った気がする。
 私がお礼を言った事に余程驚いたのか、玲さんは目を丸くした。