「そんな薔薇で喜んでくれるなら、どうぞ!」
「嬉しいです。実は今日、記念すべき20年目の結婚記念日なんです」
 斉藤さんは私から横流しされた薔薇を夫にでもプレゼントするつもりなのだろう。彼女の思考が全く理解できないが、薔薇を抱きしめる彼女は幸せそうだ。

「それは良かった」
 心からの言葉だった。
 本当はどんな贈り物を送っても喜んでくれる相手がいる斉藤さんが羨ましかった。

 私は時間を戻ったのかもしれないし、夢を見ているのかもしれない。
 私は自分に都合よく、再び神が私にチャンスをくれたのだと結論付けた。