「キルステン、お願いがあるの」
「何だ? フェリクス・ダルトワについてか?」
甘いムードでキスをしそうな流れだったのに、急に冷たく空気が張り詰めた。

「そうよ。フェリクスは私を支え続けてくれたの。どうか、彼が元の居場所に戻れるよう取り計らって欲しい」
「はぁ。随分とあの男を気にかけるんだな。一緒に入浴でもしてたりしたんじゃないのか?」
私は突然突拍子もない疑いを掛けられ泣きそうになる。
狭いワンルームに他の男と住んでいた私をキルステンが信用できる訳ないのかもしれない。

「お風呂も私は一人で入れるのよ。私が一緒にお風呂に入りたいのはキルステンだけ。前に薔薇風呂に入るって話をしてたじゃない」