一歳になったフランシスは相変わらずやんごとないオーラを放っていた。
綺麗で見惚れる美術品のような赤子。

彼を見る度にキルステンが思い出され、父親から引き離した自分に罪悪感を感じる。
私は昼間はそこらに放浪する猫と変わらない。

キルステンがどうしたことか離婚をしないせいで、皇太子妃の猫であるだけ。

「そうだね。はい! 今、忘れたよ。エマヌエル皇帝陛下が危篤なんてルスラム帝国も大変だね」
私は頭の中はキルステンとルスラム帝国でいっぱいなのに、バカになって忘れたふりを務めた。
そうでないと怪我が治ったとはいえ、全てを捨てて私の側にいるフェリクスへの申し訳がたたない。