僕を無償の愛で満たし、不安にさせる困った存在。
でも、そんなファムオブファタルに魅せられたのは僕だけではなかったようだ。


「グロスター公爵を捕えろ」
「ビルゲッタ様に呪いを掛けたのなら解け!」
騎士たちが目の色を変えている。


彼が何を企んでいるのかは現時点で分からない。
ただ、僕のビルゲッタに火の粉がかかるならば制裁すべきだと思った。

帝国に住む民がどう思おうとかまわない。
昼間は猫の姿をしている妃でも良い。
それでも側にいてほしい。

この狂おしい程に策略の巡る黒い世界に、純粋で努力家で僕を好きなだけなビルゲッタといたい。
そんな気持ちだけが疲れ果てた僕の体を突き動かしていた。