「約束された未来を捨て、僕の女である君にプロポーズするくらい、ダルトワ卿は君にご執心のようだからな。どんな危機的状況でも命懸けで君を守るだろう。君を守り、敵に討たれて殉職してくれたらありがたいな」

キルステンの声が怒りで震えている。フェリクスに対する敵意に満ちた言葉が元来優しい彼の発したものとは思えない。
ダイヤモンドの指輪を握った彼の右手の拳から血が滴っていた。ポタポタと勢いよく落ちる血がモスグリーンの絨毯にシミをつくる。

「キルステン、あのね」