人々は献身的に尽くした大貴族アボット侯爵家を、一度の失態で完膚なきまで叩き潰したエマヌエル皇帝に対し恐怖した。

幼くして母を失ったキルステンへの同情の声より、エマヌエル皇帝の横暴への批判が一時は鳴り止まなかった。

当時の私は前世の記憶もない五歳。母親を失っただけでなく、父親が変わり果てた同じく五歳だったキルステンの心を心配した。エマヌエル皇帝への恐怖心もあり、当時から皇室に嫁ぐ話はあったが断って欲しいと願っていた。

でも、キルステンと十年婚約期間を経て結婚をし、彼の側にいられた事に今は心から感謝する。誰も信じられないと思われていたキルステンが私を信じてくれている。