ある日の帰りのホームルーム。
 錦戸先生が、コホンと咳払いをしてから教鞭で黒板を指した。
 黒板には白いチョークで補習の2文字。
 隣に書いてある該当者は、漢字テスト40点以下の者で、このクラスに8名ほど居た。
 その8名の中に、恋が入っていたのはいうまでもない。
 恋は、ちょっと困った顔で、さっき返ってきたばかりの漢字テストを撫でた。

 
「今回の補習場所は教室です。」


 錦戸先生が言った。

  
「宿題と全く同じ範囲を出してるのに、できないんじゃあんまりです。そんなのは怠慢です。10分かそこらでできるんだから。……教室にプリントを用意して置くので、補習対象者は残って提出する様に。」


 恋は帰りの支度をせずに、筆箱を出して、ホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴るまで窓の外を眺めていた。