廊下からベランダの恋を見つけた美風は、教室を通ってベランダに出て2人の間に入って来た。


「新田さん」

「あ」

「美風様!」

「黃崎、新田さんに絡まないで。それから様付けはどう考えても変だったら。」


 黃崎さんは、わんこの様な笑顔を美風に見せ「だって……」と甘えた声を出した。


「美風様、ずるいです。なんで新田恋ばっかり。美風様ともあろうお方が、こともあろうに彼氏が居る人と新聞で報道されるなんて。絶対間違ってます!。」

「上野とはじき別れてもらうから。僕は待ちなんだ。別に今だけの話だから、控えって言われても構わない。」

「相思相愛の、一途な愛じゃなきゃ、親衛隊が許しません。もし相思相愛の、一途な愛であっても、私は……」

「親衛隊って、キミたちどうかしてんじゃないの。狂ってるよ。僕はそんなの欲しくないし、作ってくれって言った覚えもない。他の趣味に入れあげてる方が魅力的だと思うけど。言っとくけど白王子って公式じゃなくて非公式だからね、本人が認めてない。」


 
 黃崎さんは、そこで恋を睨んだ。


 
「あんたなんか、居なきゃ良かったのに。」

「ごめんね黃崎。僕の好きなのは新田さんだけ。他の女の子は目に入らない。キミが僕を好きだって言ってくれるのは嬉しいけど、絶対に応えられないよ。」


 それから美風はふと顔を上げて、


「新田さん、黃崎の事知ってたっけ?」


 と聞いた。


「話すのは初めて。」


 黃崎さんは長い髪を一振りすると自己紹介した。


「2−2の黃崎うらら。好きなものは美風様と可愛いもの。可愛いものだけで地球が満たされれば良いのにって思ってる。趣味はメイクと可愛いものを集める事。これ重要、私白王子の親衛隊だから!。」

「親衛隊っていうのが新聞部の報道から新しく発足してるんだ。」


 美風が説明した。


「一ヶ月に1回、座談会に出席してファンからの質問に答えるのが義務なんだ。僕は嫌いだから写真は撮らないで貰う事にしてるけど、結局ちょっと撮られてる。加納先輩達から、上野にもお達しがあったはずだけど。うんざりしてる。辞めれるなら辞めたいけどね。」

「そうおっしゃらず。ファン達にとって、例え思いが届かなくても、大きな慰めになる交流会なんです。私なんか握手して貰った時、嬉しくて思わず泣いちゃったんだから」

 美風は微妙顔をしていたが、やがて


「じゃ、黃崎、話は終わり?」


 と聞いた。


「新田さんを探してたんだ。話がしたくて。言っとくけど、僕たちの邪魔をしたら、座談会にも撮影会にも握手会にも僕は行かないから……ね。」