勉強会の途中で、伊鞠と桂香は立ち上がって理央の家の写真を撮り始めた。

 宗介は問題を解く横顔を撮られ、美風は顔を撮ろうとした所を怒り笑いで辞書を手に防いだ。

 
「樋山くんは、何で撮られるのが嫌いなの?」

 伊鞠が聞いた。


「とっても綺麗な顔をしてるし、写りも良いのに。あんまりそうなの変よ。異常。」

「何でって言われても……」

「変よね?。駒井さん。上野くん。ねえ新田さん。」

「樋山がそうなの死ぬほどどうでもいい。僕は新聞に貼られなきゃ気になんないけど。新聞に載せる許可した覚えはないし、いちいちポーズ取る気もない。撮られるの好きな奴が目立ちたがりなんだろ。」

「上野くんと樋山くんに関しては、綺麗な顔してるからどんどん撮って貰った方が良いと思うけど。勿体ないよ。写り良いんだから。」

「樋山くんなんでなの?」


 恋が聞くと、美風は考える顔をした。

 
「なんていうか、多分僕、自分の顔が好きじゃないんだ」

「えっそれどういう意味?」


 美風の言葉に、理央が驚いた顔をして顔を上げた。


「樋山くんの顔好きって言う人多いよ。上野くんと並んで黒白王子じゃん。かっこよくて羨ましがられてるよ。自信持ちなよ。一体何が不満なの?」

「いや、顔が嫌いっていうか……言い違え。うーんと」


 美風はいい直した。


「顔はなんとも思ってないけど、顔で騒がれるのが嫌いなんだ。小さい頃から。ほら、顔見に来るでしょう?女子って気に入ると。廊下から教室に向かって、話しかけられないで、遠巻きに見つめられるのが、気持ち悪いと言うか、気まずいというか、なんというか。」

 
 美風は遠い目をした。


「顔ジロジロ見られてから会話すんの疲れて。目合わせると挙動不審な動きされて面倒くさくて。そういう状態が、イベントごとにあった。」 

「苦労するね。」

「そうだったの。」


 伊鞠はそう独り言てから、

 
「とはいえ。」


 と言いながらカメラを向けて美風を1枚撮った。
 美風が黙って居ると伊鞠は続けて美風を色んな角度から撮り始めた。続いて桂香もカメラを構え、美風の顔をパシャパシャと無遠慮に連続して2人で撮った。

 
 
「うん、いい写真。」
 
「……」

「あっ先輩私も撮ってくださいよ。SNSに転送してください。こっちの問題集も撮ってくださいよ。」

 

 理央の言葉を聞きながら怒り笑いした美風は、ったく、と呟くと、新聞部のカメラを警戒しながら下を向いてまた問題を解き始めた。