そして日曜。
美風は母親の運転する車で、恋と宗介を自宅まで迎えに来た。
「待ってたのよ。今日はよろしく」
車の窓を開けて美風の母親が笑顔で言った。
「おはようございます」
「おはようございます。今日はお世話になります」
宗介は他人用の笑顔を作ってそう言うと、車のドアを開けた。
「おはよう新田さん。母さん、そいつは乗せなくていいよ」
「は?」
「今日は僕たちだけで行こうとしてたのに、上野が横入りしたんだ。予定外。迷惑。」
「まあまあ、美風、みんなで仲良くしなさいよ」
「冗談で言ってるんじゃないんだけど……今日は新田さんを独占できるかと思ってたのに。あーあ、上野も一緒か。嫌だ嫌だ。」
宗介は美風を無視して車に乗り込んだ。
その隣に恋が座る。
車は走り出した。
「山側の町にある一軒家なの。」
運転しながら、美風の母親が言った。
「注文して建てた別荘じゃないけど、とっても広いのよ。中は割と豪華な作りだし。今日はいい気分転換になると良いけど。」
「新田さんと遊びに行けるの、楽しみにしてたんだ。……結構走ったね。かなり距離があるから。新田さん大丈夫、酔ったりしてない?」
美風が聞いた。
「上野が居るけどしょうがない。あーあ、新田さんは、なんで上野なんかが良いんだろ。せっかく僕の隠れ家なのに。上野、僕たちの邪魔すんなよな。」
美風の母親が居るので、宗介は何も言わずに、バックミラーから美風にガンを飛ばした。

