恋は、自分の三角関係について、あまり深く考えたことがなかった。
 小等部から始まった三人の関係がいつまで続くかについても考えた事がなく、恋はただ流れのままに居た。
 美風は、自分の初恋について失恋で終わらせる気はなかったが、恋が宗介寄りなので気を揉んでいた。
 美風は折衷案として三角関係を三角関係のまま続ける事を考えていた。
 それを永遠に続けられれば、少なくとも、自分は恋を譲ったことにはならない、と美風はそう思っていたのである。



 ある日のこと。

 
「新田さん」


 教室のロッカーの前で美風が恋に口を開いた。

 恋は、朝の読書の本を学級文庫から選ぼうとしていた所だった。

 
「樋山くん」

「今度の休み、うちの別荘に遊びに行かない?」

「えっ」

「親が別何軒か持ってて、そのうちのひとつ。わざとリゾート地に建てないで、郊外にあるんだ。避暑地にある方だったら片付けなきゃ使えないんだけど、そっちだったら、行ってすぐに使えるから。時々親が行って使ってるからなんだ。」

「樋山くん、誘ってもらって悪いけど、宗介が居るから……」


 恋は困ったという顔で手を振った。

 しかし美風に気にした素振りはなく、美風は続けて言った。


「冷蔵庫3つ置いてあって、専門店のアイス何種類もストックしてあって、食べ放題。書斎もあるし、シアタールームもある。お客さん用のベッドルームは3つあって、全室ベッドは超ふかふか。来て貰って損はさせない。ね?。一緒に行こうよ。」

「……」

「キミのために空けて貰ったんだから。絶対一緒に来てくれなきゃ。言っとくけど、上野には内緒だからね。」

 美風は腕組みをして言うと、機嫌良く日程について話し始めた。