宗介のメールに、これから起こりうる事態を考えて頭痛を覚えた恋は、一足先に休むことにした。

 寝袋を使わずにテントに寝転がると、今日の川遊びの事が思い出される。

 恋はそのまま微睡んだ。

 
 しばらく経って、恋は物音で目を覚ました。
 テントを開ける音と、狭いテントの中で動く軽いテントの擦れる音。
 恋が薄目を開けた。

 するとそこには、恋の顔を下に肘をついて、横になってこっちを見ている律がいて。いわゆる床ドンという状態。


 
「へっ?律?」

「目が覚めたんですか。恋。」



 律は小声で囁くように言った。


「しーっ大きい声を出すと樋山さんにバレる。静かに喋ってください。」

「……」


 律は恋の目をじっと見た。
 その姿勢のまま、わざとゆっくりした口調で言った。

「姉さんが言ってた。女の子はこういう風にすると喜ぶんだって。ドキドキするんだって。ときめくんだって。」


 それからどんどん恋に顔を近づけて、


「……本当なんですか?」


 と超至近距離の耳元で囁いた。

 
 恋が固まっていると、急ににやり、と律が笑った。
 
 
「なーんて。驚くと思ってやっただけですよ。どうです?びっくりしました?」


 姿勢を変えてケラケラと笑い出した律に、恋は困り笑いで、うーん、と言った。

 美風はその間外で星を見ていた。

 満点の夜空は星がきらきらして美しく、美風は、今日遊んだ恋の事を思い返していた。