学校帰り恋が宗介の家に寄ると、宗介は恋が来てすぐキッチンで薬缶にお湯を沸かしてお茶を淹れた。

 宗介はリビングのソファに、恋はラグに座ってお茶を飲んでいると、今日も過ぎていく変わらない平和な1日という感じがする。

 自分用の湯呑みでお茶を飲みながら、宗介が口開いた。


「恋、あやかし狐って、特別だと思う?」

「え」

「例えば、僕もあやかし狐だったら良かったなとかそういう事を思う?」

「宗介は……」



 恋は宗介があやかし狐だったら、と考えた。

 宗介があやかし狐だったら、一緒に森の探索に行けるかもしれない。狐の姿でじゃれっこもできるかもしれない。


「良いね、狐だったら」


 思わずニコニコしながら恋が言うと、宗介はハア、とため息をついた。


「そいつ、あやかし狐なんだろ。」


 宗介が言った。


「ああ、律?。そうだよ」

「言っとくけど」


 宗介が言葉を切った。


「あやかし狐特有のじゃれっこは禁止。2人で変身するのも禁止。もちろん、僕以外に狐を撫でさせるのも禁止。特に顎の下撫でさせるの禁止。抱かせるのも、一緒に眠るのも厳禁。ったく。言わなきゃやるんだから。」

「妬いてるの?」


 きょとんとした顔で恋が聞くと、宗介はシカトした。
 そして


「さあね?。今日のお茶はちょっと渋めだ。その方が良いけど。恋も全部飲むように。」


 と言って、手に取った雑誌を読み始めてしまった。