恋と律は、店内の小さなお土産屋のスペースに隠れていた。
 案外鬼はこのスペースを探すことなく、外のアスレチックやエレベーターの方へ行った。

 
「静かですね」

 
 律が言った。



「恋と2人きり。鬼ごっこもそう考えると中々良いですね。」

「しっ。話してたら鬼が来ちゃうよ。静かにして。」

「僕は捕まっても良いんですよ。鬼ごっこなんて、本気でやってないし。でも、本気でやってみても楽しいかもしれませんね。酔狂に気合入れて逃げようかな。でもこのスペースって、狭いから鬼が来ると逃げられませんよ。」

「確かに」

「恋」


 
 律が言った。



「上野さんの事、本当に好きなんですか?。好きって、僕より?」

「律……」

「考え直したほうが良いですよ。僕とあなたは同類だ。あやかし狐ということで繋がっている。対して、上野さんには繋がりが何もない。狐の子の事なんて、腹の底では上野さんもどう思ってるかわかりませんよ。狐同士は相性バッチリだけど、狐と普通の人は相容れません。長期的に考えて、僕を選んだ方が良いと思いますよ。あーあ、上野さんが幼なじみの古株で羨ましい。僕ももうちょっと早く恋と出会ってたら違ったのに。……、」



 と、そこまで言い置くと、律は猛ダッシュでお土産屋を飛び出していった。
 と、そこへ現れたのは宗介と美風。


 
「僕鬼」

「僕も」



 宗介と美風はお土産の一角で立ち往生している恋を見た。


「逃げらんないね?」


 挟み撃ちに笑顔で宗介が言って、美風がくすくす笑った。