リビングでは恋と律と美風が話をしていた。

 
「魔法を撒く町のパンフレットが来ましたよ。」


 律が言った。

 

「5箇所星型に回るんですよ。写真を貰ってきてます。」

「星型というのに意味はあるの?」

 

 恋が聞いた。


「あるらしいですよ。公にはされてませんけど。どこから行きます?」


 宗介は手渡されたパンフレットを見た。

 古い歴史のある由緒正しい本の町。
 美しいガラス小物を扱う陶器の町。
 おいしいグルメを提供する美食の町。
 今をときめくお洒落なファッションの町。
 それからいつもお祭りをやっている城下町。


「順番になってるなら、変えない方が良いんだろ。」


 宗介が言うと美風も同調した。


 
「僕もそう思った。何か意味がありそうだし。近場からになってるから、その方が簡単だと思うし。」

「じゃあ決まりだね。」

 

 恋が言うと律が言った。

 
 
「恋だけは元の世界に帰らないで、この世界であやかし狐の僕の相手をしてくれれば良いのに。まったく何でそんなに帰りたがるんですか?」

「ごめんね、律」

「楽しいと思うのにな。魔法は使えないにしても、お金は使い放題だし。ねえ恋、考え直しませんか?」

「律、恋を釣るのは辞めろよ。」


  
 宗介が言った。


 
「僕たちはこの世界の人間じゃない。どうしたって元の世界に帰らなきゃ。こっちに来ちゃってるのは異常なんだから。おかしい、こういう風にシェルターで寛いでるの。」

「目処が立って良かった。きっと家族が心配してる。うちの親ちょっと心配性なんだよね。新田さんの家族も心配してると思うよ。」

「じゃあ、記念に、みんなでケーキでも食べて、出発をお祝いしようか。」
 
「新田さん、ケーキ食べたいだけでしょ。」

「へへ……」


 
 美風がくすくす笑う。

 恋は、冷蔵庫から持ってきたホールケーキを、ナイフで4つに切り分けた。


「乾杯。」