先程、私がオスカーを拒絶した事もあり気不味い。

「オスカー・アベラルド王太子殿下と、シェリル・ヘッドリー侯爵令嬢が入場します」

戸惑いながらも慣例に従いオスカーの手を取り舞踏会会場に入場する。

一斉に貴族たちの注目が私たちに集まると、始まるオーケストラの荘厳な演奏。

光り輝くシャンデリアに照らされる豪華絢爛とした内装には貧しさは感じない。
貴族たちは富を見せつけるように皆、宝飾品をしつこいくらいに身につけ着飾っている。
端にある食事コーナーにはシェフたちが腕を振るった料理。

色とりどりのマカロンタワーは見て楽しむだけで、誰も口をつけずに毎回破棄されている。
平民たちが空腹で苦しんでいる時に、こんな贅沢をしていたら非難されて当然だ。

私とオスカーは舞踏会の始まりのダンスをする。
私はモヤモヤした気持ちのままオスカーと踊り始めた。

「シェリル、先程は⋯⋯」

オスカーが私から目を逸す。彼は何を話し始めるつもりなんだろう。私を咎める言葉?