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 「ピアノ習いたい!」


そう言ったのは、5歳の頃の私。


きっかけは幼稚園での演奏会。


1個年上の子がピアノを演奏しているのを聞いて私もやってみたくなったから。

それは今思えばその子は咲也くんだった。



お母さんにはすぐ了承を得ることができた。


そして、ピアノ教室に行って出会ったのは華麗に演奏をする咲也くんだった。


弾き終わった咲也くんは先生に褒められて先生に頼まれたのか違う曲を弾いていた。


私は驚きを通り越して尊敬した。


そして、感動した私は咲也くんに声をかけていた。

 
 「あなたのピアノとってもきれいな音!」


私の方を見た咲也くんは、驚きが全面にでた表情をしていた。


 「えっと、ありがとう」


咲也くんは一言返事をして、またピアノに熱中してしまった。


私はピアノを弾き始めた咲也くんをじっと見ていた。

そんな私の視線に耐えられなかったのか、咲也くんはピアノを辞め、私に質問してきた。

 
 「きみの名前はなに?
  
  きみもピアノ弾きにきたの?」


そう言って、私の顔をじっと見てきた。


 「わたしの名前はてんぐうそら!!

  ピアノひきにきたよ!」

私は多分曇り一つない笑顔で咲也くんに対しての質問を答えていたと思う。

そこで、私はピアノ少年の名前が「久崎咲也」だと知った。




そこから私はそのピアノ教室に通い始めた。

最初は譜面を追うのに必死で指がついていかないことも少なくはなかった。

けれど、その度咲也くんが教えてくれて、いつしか私と咲也くんはいつも一緒にいるような仲になっていた。


そして、時は流れ小学生になった私はひと足先に入学していた咲也くんと相変わらずの関係だった。



けれど、咲也くんが小学校を卒業するタイミングでピアノ教室を辞めてしまい、中学もバラバラでいつしか咲也くんは記憶の中の人になっていた。



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