「せなちゃんって本当に賢いし可愛いよね！」



「ほんと！それにしても、あの妹さんはね…」



「本当は双子じゃないんじゃない？」



「とても双子には見えないよね」



朝、学校へ行く途中同じクラスの女子たちが私の後ろでコソコソと話している。



毎日のことだし、もう慣れたんだけどね。



そして学校に着くと、今日も下駄箱やら机の中やら手紙が大量に入っている。



これも全部、せな宛てのものだ。



男子は自分からせなに渡しに行く勇気がないから、いつも私に頼んでくる。



「せなちゃんの妹だよね？これ、せなちゃんに渡しておいてほしい」



私はいつだって"せなの妹"と言われている。



間違ってはないけど、せなは"りなの姉"とは言われない。



この事について、一度だけ聞いてみたことがあった。



みんな口を揃えて、



「せなちゃんはせなちゃんだけど、佐藤さんはせなちゃんの妹でしょ？」



と言う。



せなは"せなちゃん"と呼ばれているけど、私は"佐藤さん"と苗字で呼ばれる。



それに、毎回学校では、



「うぜーんだよクズ！」



「せなちゃんだけで充分なんだよ！」



「お前なんか生まれてこなければ良かったのに」



三人組に目をつけられ、イジメられている。



クラスのみんなはクスクスと笑ったり、動画を撮ってきたり…



誰もイジメを止める人はいなかった。



昔、一度だけせながイジメられた事があった。



その時は、せなに嫉妬した女子が嫌がらせをしたけど、クラスのみんながせなを守ったんだって。



その後、その女子はせなと仲良くなっていつも一緒に行動している。



それなのに、私がイジメられている時は誰も助けてくれない。



どれだけ「助けて！」と叫んでも、誰も止めに入らない。



「おい何とか言えよ！」



ガタンと机が突き飛ばされた。



そして、椅子に座って震えている私を蹴飛ばして、ケラケラと笑っている。



私は勢いよく椅子から落ちて床に叩きつけられ、顔面強打した。



「痛い…」



起き上がろうとすると今度は、私の頭を踏みつけて、ぐりぐりと床に押し付ける。



「さっさと死ねよクソ女！」



そう言ってようやく私の頭から足を下ろしてくれた。



私は涙を堪えながら教室を飛び出した。