「私は帝国に移住したビアンカ様に会いに行く予定です。大切に育てられた公爵令嬢が、たった1人で他国で暮らすのは大変だと思います。何か彼女のサポートができればと思っております」

私が長期休みの予定を話すとレイモンドは顔を顰めた。

「もう、ビアンカ・リードのことはどうでも良くないですか? 帝国の公女だったエレノアだって孤児院で暮らせたのだから問題ありませんよ」

レイモンドが呆れたように発する言葉は、彼の本質を表しているようだった。

彼は何も変わっていない、自分が大切で人のことは道具としか思っていない人間だ。
そして、私が今まで恐々と打ち明けてきた秘密を何とも思っていないようにみえた。

私は孤児院がパラダイスに思えるくらいの生活を帝国でしてきた。
しょっちゅう父の気分で食事をとらせてもらえず、憂さ晴らしにたくさん殴られてきたのだ。

それらを全て私は話しやすく思っていた彼には打ち明けてきた。
それを真剣に聞いていたら、私を帝国の公女などと言えないはずだ。
私は人間とさえ扱われてない道具だったと彼を信用し伝えてきた。