僕は鮮明に春の香りを感じた。

見上げてみれば桜がちらほら咲いていて、高校への入学を祝福している様だった。
僕が入った高校は、長い坂を登った先の森の中に立つ「白井高校」というところだ。ここにした決め手は家から徒歩15分、自転車で6分弱という好条件に加えて、男子が学ランだったからだ。現に僕も学ランを着て学校に向かっている。今の時代は女子が学ランを着るのが許されている。それに僕は納得がいかない。細身の身体でちょっとやけた肌にワックスは愚か寝癖さえも直されていない髪。そんな男が僕は好きだ。そう。僕は同性愛者、世間ではゲイと言われるやつだ。女の子を好きになったことは無いし、女の子に対してエロいという感情も湧かない。それを自覚したのは中学2年生の春で同じクラスの男の子が僕の手を握ってきた時だった。その男の子には最後まで思いは伝えられなかったが、後悔はない。高校に上がれば身体的にも大人に近づいていて、ある程度の知識をつけたイケメンが沢山いると思っているからだ。