「僕には愛とか恋とかよくわかりませんが、人間の気持ちってそんなにかんたんなものなのでしょうか」
彼は小さくうずくまって雑草をむしりはじめる。黒い軍手をした手はとても大きい。彼の顔よりも大きいのではないだろうか。
「僕は推しの一生懸命さに惹かれます。歌声が美しくて聴くたびに涙してしまう。
英語を独学してペラペラなところを尊敬している。作曲もできるしダンスも上手い。推しを見ていると、
僕もがんばろうって思います。勇気と元気をもらえる」
「ガチ恋なの?」
「いいえ」
私の意地悪な質問に、彼はきっぱりとそう答えた。
「ガチ恋ではありませんが、僕の推しへの想いは真剣なものです」
「意味わかんない」
「あ、栄養剤は均等にまいてくださいね」
「わかってるよ」
「推しを見ていると本当に楽しい。刺激とインスピレーションをもらえる。今日も生きようって思う」
「え」
彼が私を見た。逆光で表情が見えなかった。
「推しがいなかったら、僕はここにいなかった」
彼は小さくうずくまって雑草をむしりはじめる。黒い軍手をした手はとても大きい。彼の顔よりも大きいのではないだろうか。
「僕は推しの一生懸命さに惹かれます。歌声が美しくて聴くたびに涙してしまう。
英語を独学してペラペラなところを尊敬している。作曲もできるしダンスも上手い。推しを見ていると、
僕もがんばろうって思います。勇気と元気をもらえる」
「ガチ恋なの?」
「いいえ」
私の意地悪な質問に、彼はきっぱりとそう答えた。
「ガチ恋ではありませんが、僕の推しへの想いは真剣なものです」
「意味わかんない」
「あ、栄養剤は均等にまいてくださいね」
「わかってるよ」
「推しを見ていると本当に楽しい。刺激とインスピレーションをもらえる。今日も生きようって思う」
「え」
彼が私を見た。逆光で表情が見えなかった。
「推しがいなかったら、僕はここにいなかった」



