「はぁ…」
わたしは今年の課題曲のトランペット2ndの譜面をにらみながら小さくため息をついた。
そして、わたしの左にいる、銀色のトランペットを構えて悠々と音を出している同級生の縄野柚音を横目で軽くにらむ。
わたしの右にいたはずの、3年の先輩―名瀬冬華は高校受験のために退部してしまった。
わたしの右には名瀬先輩の代わりに、1年生の川宮玲佳が譜面にかじりつきながらたどたどしく音を出している。
名瀬先輩の退部によってトランペットの頭数が足りなくなり、彼女は1年生で唯一コンクールメンバーに入っている。
わたしはうーん、と体を伸ばし、トランペットに息を吹き込んだ。



