「碧依ー、ご飯よー」
縄野柚音と電話でしゃべった後、インスタのリール動画を流し見しているとリビングからお母さんの声が聞こえた。
「はーい」
スマホをベッドに置いてリビングに向かう。
リビングには小6の生意気な妹が食卓に座って待っていて、すでに箸を持っている。
「お姉ちゃん遅いよー、今日唐揚げなのに!」
「ごめんごめん」
「「「いただきまーす」」」
唐揚げを箸でつかんで口に運ぶと、じゅわっと醤油の味が口の中に広がった。
「碧依、いつまでお弁当いるの?」
母親がキャベツにドレッシングをかけながらわたしに聞いた。
「地区大会までだったら27、県大会進んだら8月4日までかな。結果次第。」
「お弁当のおかず全然買ってないけどこの後買いに行く?」
行く、と答えかけたわたしの頭に澄羽の顔が思い浮かんだ。
「勉強しないとだから、明日でいいよ」
学校は明日までなので、夏休みになると澄羽と会える確率が下がってしまう。
今日中に写真コンクールの写真に写ってくれる人を見つけた、と伝えた方がいいだろう。
「そう。なんか買ってきてほしいものある?」
「占いグラタンとスイートポテト入れてほしいな。」
「お姉ちゃんが勉強するとか言い出すなんて明日雪降る超えて地球滅亡するでしょー」
わたしがそうお母さんに返事すると、妹が茶化すように言って、グラスの麦茶をあおった。
「失礼極まりないなー。来年受験生だから勉強くらいするよー」
私はわざと怒ったような口調で妹に言葉を返した。



