「あっつ…」

砂浜にさしたパラソルの影の中にいても、夏の日差しは私の肌を容赦なく突き刺してくる。

澄羽(すみは)っちー!」

じゃぶじゃぶと海から上がってきた縄野柚音(なわのゆのん)が暑い暑いと言いながら、私の手元にある一眼レフをのぞき込む。

彼女のポニーテールから海水が滴り、ぽとっと一眼レフの液晶に落ちた。

「柚音、そんな近づいたらカメラに水つくだろ」

チョコレートでコーティングされた棒アイスを頬張りながら瀬川遥樹(せがわはるき)があきれたような声色でそういう。

「ごめんね澄羽っち。写真撮れた?」

「まだ…ごめんね、いろんなとこに付き合わせちゃって」

一眼レフの液晶にはさっき撮った、青い空とキラキラ輝く真っ青な海の写真が映っていた。

「あ、ここいいな」

ぽちぽちとスマホをいじっていた遥樹くんが、スマホの画面をこちらに向ける。

『M市夏祭り 芸人のジャージー牛乳がやってくる!祭りの最後には抽選会も!豪華景品ご用意しています☆』

テンションの高いフォントが彼のスマホで躍っている。

「8月4日か~。部活もないし行こっかなぁ」

浴衣とか新しく買っちゃおっかなー、と柚音はうきうきしている。

彼女の心を表すかのように、ゆらゆらと揺れる青い海は太陽の光を反射して直視できないほどのきらめきを放っていた―――