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確か始まりは、それこそ物心つくかつかないかくらいの幼いときだったと思う。
最初は、隣の家の人くらいの認識だったけれど、あるときを境に仲良くなった。
そのときからいつも隣にいたのは棗だったし、もちろん一番仲がいいのも棗だった。
棗はまさに万人に好かれるような、穏やかで柔和な奴で、俺は、なぜか周りに怖がられ敬遠される存在。
そんな正反対な俺たちがなぜ急激に仲良くなったのか。
時は、小学4年生の春に遡る。
当時の俺は、小学生にしては変に大人びたガキだった。
「 …?母さん、これなに。」
「 ああ、これはピアスよ。あんたもつけてみれば?」
母は基本俺には冷たかった。自分の興味のあることだけには会話をしてくれる人だった。そんな母だったから物心ついたときから自分から話しかけることはしなかったし、もちろん質問なんてもってのほか。
なのに、そのキラキラと自ら輝きを放つそれへの興味は、自分の中で母に対する恐怖より優位に立ったのだろう。気づけば口に出していた。
