クリスマスイヴの駅前は、相変わらず世話しなく人が行き交っていた。

そのほとんどが恋人のように見受けられた。

時刻は十九時で、やはり相変わらずクリスマスソングが街中に響いている。

初雪混じりの渇いた風が、ひゅうひゅう、ビルの隙間を吹き抜けていた。

今年のクリスマスイヴの風は、辛い味がする。

「お姉さんの名前、教えて」

突然、隼がわたしの手をとり、繋いだ。

温かい手を、隼はしていた。

「真央……木下真央」

「いい名前だね」

「何処にでも転がっていそうな名前よ」

「そうかな。いい名前だと思うけど。このまま、手を繋いでいてもいいかな」

明るいところで見る隼の顔は、女のわたしから見てもどきどきするほど、整っていた。

オーランド・ブルームのように通った鼻筋で、きりりとした切れ長の目元。

無造作にセットされた髪の毛は、亜麻色をしていた。

「真央さんは、手を繋ぐのは嫌い?」

「いいえ、好きよ。わたしはいいけど、周りから見たらわたしは犯罪者だわ」

そう言って、わたしはクスクス笑った。

「それは困るなあ。でも、美人を連れて歩けるなんて、一生に何度もないからさ。光栄だよ」

なんて変な男子高校生なのだろうか。