私の恋は叶わない恋。
そんなの、とっくに知ってる。
「綾―、おはよう。」
朝は芽衣ちゃんと行くところから始まる。
「おはよう。」
「あれ、綾…」
芽衣ちゃんが近くに来て、まじまじと私を見つめる。
「ピンしてる!可愛いね。」
「う、うん。ありがとう。」
「どうしたの?イメチェン?」
「‼︎う、うん。そんな感じかな。」
言えない、ハルヒに振り向いてもらうためなんて。
芽衣ちゃんが気づいてるのか分からないけど、私は知ってる。
ハルヒが芽衣ちゃんを好きだってこと。
それに気づいたのは、小学生の時だった。
ハルヒとは長い付き合いだから分かる。
でも、自分がハルヒを好きってことは、最近気づいた。
気づかない方がよかったのに、と思う。
どうせ自分に勝ち目なんてないのに。
「――や!綾!」
芽衣ちゃんの声で、ハッと我に返る。
「ハッ!どうしたの芽衣ちゃん?」
「いや、こっちこそ。ずっと話しかけても上の空じゃん。」
「ご、ごめん。」
「別にいいけどさー。」
そう言う芽衣ちゃんは、今日もジャージにズボンという、男の子らしい格好だ。
私は最近買ったセーターにスカート。
ハルヒの好みは何となく分かる。これもずっと一緒にいるからだろうか。
小動物っぽくて、ゴツゴツしていないナチュラルな感じ。
歴代の彼女を見てもそうだ。だからこそ、芽衣ちゃんみたいなタイプは珍しい。
芽衣ちゃんをまじまじと見ていると、「何」と怪しまれてしまった。
「ううん、別に。」
ハルヒは芽衣ちゃんのどこが好きなのだろう。たしかに芽衣ちゃんはカッコいいし優しいけど、見た目に関しては失礼だが地味だ。前にお化粧しないのと聞いたことがあったけど、興味がないらしい。それに美容室ではなく床屋へ行っている。芽衣ちゃんのいとこがそうなのだ。私のお父さんもお世話になっている。
大学に着くと、ついついハルヒを探してしまう。
ハッと目に入ると、つい目を逸せてしまう。
こんなの、恋してるってバレバレだ。
ハルヒも芽衣ちゃんも、気づいているんだろうか、と不安になる。
芽衣ちゃんがハルヒに恋している素振りは、全くといっていいほど見せない。
今日も「おはよー」と普通に話しかけているし、「あ、髪にゴミついてるよ」と接近している。
近い、近すぎる…‼︎
女子たちの痛い視線も感じ、私は耐えられなくなって自分の席へ逃げた。
――
4限目の授業がおわると、部室へ行った。
やっぱり、家庭科室が落ち着く。
ミシンに触れると、家に帰ったような安心感に包まれる。
コンコン、とノックがして、私は驚きのあまりイスから転げおちた。
「あら、大丈夫?」
やってきたのは、先輩の毛布先輩だった。
栗色でふわふわの髪の毛と閉じた目が特徴の先輩は、いかにもハルヒが惚れそうだ。だからライバル視していたのだが、とくにそんな素振りはなかった。
そもそも、同じサークルじゃないのだから、関わることもあまりない。
毛布先輩の閉じた目というのは、先輩は盲目なのだ。そのため、私が支えている。そもそも、家庭科部は人数が少ないのだ。あと1人先輩がいるのだが、その先輩は不登校で、基本的にいつも2人だ。だから芽衣ちゃんを誘うのだが、入ってくれそうにない。もし芽衣ちゃんが入ってくれたらハルヒも入ってくれるのに、と思う。ハルヒにはそういうところがあった。好きな子を追いかける、みたいな。
まあ、だから私は脈なしってことだよね。
はあ、とため息をつくと、毛布先輩の「どうしたの?」という声が聞こえた。
「や、何でもないです。」
適当に返事すると、私はミシンで縫いはじめた。
静かな部室に、カタカタとミシンの音だけが響く。
「ねえ、先輩。」
私が静けさを破った。
「何で目が見えないのにこのサークルに入ったんですか?」
あ、ちょっと失礼かも。
と思っていると、先輩の返事が聞こえた。
「お母さんがね、ハンドメイド作家なの。どんな感じなのか見ることはできないんだけど、手触りが好きだったの。それで、わたしも作ってみたいなって。」
「へえ。」
でも危なくないんですか、と付けくわえた。
「まあね。目が見えないから、サポートしてもらわないとケガだらけだよね。でも、好きなんだ。」
「あ、そ、そうですか。」
何だか照れるな。
と思っていると、チャイムが鳴った。
「あ、そろそろ帰らなきゃですね。」
私がイスから立ち上がると、先輩も立ち上がった。
先輩を支えながら部室を出ると、バッタリとハルヒに出会ってしまった。
「あ、は、ハルヒ。」
何だかドキマギしてしまう。
でもハルヒは普通の様子で「おー。おわったの?」と聞いてきた。
本当に意識されてないんだな。
そう思うと悲しくなってきた。
「う、うん。ハルヒも?」
相変わらず私の片想いなんだな。私ばっかりドキドキしてる。
「えっと…」
ハルヒが言いかけたところで、背後から足音が聞こえた。
芽衣ちゃんだった。
げ、今一番会いたくなかった…。
それでも構わず、芽衣ちゃんはこちらへやってきた。
「あ、綾!」
芽衣ちゃんはハルヒを無視して、私の方へやってきた。
で、芽衣ちゃんはハルヒのことを意識してない。
ハルヒの方を見ると、頬を染めていた。
はあ、とため息をつく。
いいよ、協力してあげる。
2人は大事な友だちだから。
「私もう行くね。」
そう言うと、私は先輩を引き連れ、2人を残した。
そんなの、とっくに知ってる。
「綾―、おはよう。」
朝は芽衣ちゃんと行くところから始まる。
「おはよう。」
「あれ、綾…」
芽衣ちゃんが近くに来て、まじまじと私を見つめる。
「ピンしてる!可愛いね。」
「う、うん。ありがとう。」
「どうしたの?イメチェン?」
「‼︎う、うん。そんな感じかな。」
言えない、ハルヒに振り向いてもらうためなんて。
芽衣ちゃんが気づいてるのか分からないけど、私は知ってる。
ハルヒが芽衣ちゃんを好きだってこと。
それに気づいたのは、小学生の時だった。
ハルヒとは長い付き合いだから分かる。
でも、自分がハルヒを好きってことは、最近気づいた。
気づかない方がよかったのに、と思う。
どうせ自分に勝ち目なんてないのに。
「――や!綾!」
芽衣ちゃんの声で、ハッと我に返る。
「ハッ!どうしたの芽衣ちゃん?」
「いや、こっちこそ。ずっと話しかけても上の空じゃん。」
「ご、ごめん。」
「別にいいけどさー。」
そう言う芽衣ちゃんは、今日もジャージにズボンという、男の子らしい格好だ。
私は最近買ったセーターにスカート。
ハルヒの好みは何となく分かる。これもずっと一緒にいるからだろうか。
小動物っぽくて、ゴツゴツしていないナチュラルな感じ。
歴代の彼女を見てもそうだ。だからこそ、芽衣ちゃんみたいなタイプは珍しい。
芽衣ちゃんをまじまじと見ていると、「何」と怪しまれてしまった。
「ううん、別に。」
ハルヒは芽衣ちゃんのどこが好きなのだろう。たしかに芽衣ちゃんはカッコいいし優しいけど、見た目に関しては失礼だが地味だ。前にお化粧しないのと聞いたことがあったけど、興味がないらしい。それに美容室ではなく床屋へ行っている。芽衣ちゃんのいとこがそうなのだ。私のお父さんもお世話になっている。
大学に着くと、ついついハルヒを探してしまう。
ハッと目に入ると、つい目を逸せてしまう。
こんなの、恋してるってバレバレだ。
ハルヒも芽衣ちゃんも、気づいているんだろうか、と不安になる。
芽衣ちゃんがハルヒに恋している素振りは、全くといっていいほど見せない。
今日も「おはよー」と普通に話しかけているし、「あ、髪にゴミついてるよ」と接近している。
近い、近すぎる…‼︎
女子たちの痛い視線も感じ、私は耐えられなくなって自分の席へ逃げた。
――
4限目の授業がおわると、部室へ行った。
やっぱり、家庭科室が落ち着く。
ミシンに触れると、家に帰ったような安心感に包まれる。
コンコン、とノックがして、私は驚きのあまりイスから転げおちた。
「あら、大丈夫?」
やってきたのは、先輩の毛布先輩だった。
栗色でふわふわの髪の毛と閉じた目が特徴の先輩は、いかにもハルヒが惚れそうだ。だからライバル視していたのだが、とくにそんな素振りはなかった。
そもそも、同じサークルじゃないのだから、関わることもあまりない。
毛布先輩の閉じた目というのは、先輩は盲目なのだ。そのため、私が支えている。そもそも、家庭科部は人数が少ないのだ。あと1人先輩がいるのだが、その先輩は不登校で、基本的にいつも2人だ。だから芽衣ちゃんを誘うのだが、入ってくれそうにない。もし芽衣ちゃんが入ってくれたらハルヒも入ってくれるのに、と思う。ハルヒにはそういうところがあった。好きな子を追いかける、みたいな。
まあ、だから私は脈なしってことだよね。
はあ、とため息をつくと、毛布先輩の「どうしたの?」という声が聞こえた。
「や、何でもないです。」
適当に返事すると、私はミシンで縫いはじめた。
静かな部室に、カタカタとミシンの音だけが響く。
「ねえ、先輩。」
私が静けさを破った。
「何で目が見えないのにこのサークルに入ったんですか?」
あ、ちょっと失礼かも。
と思っていると、先輩の返事が聞こえた。
「お母さんがね、ハンドメイド作家なの。どんな感じなのか見ることはできないんだけど、手触りが好きだったの。それで、わたしも作ってみたいなって。」
「へえ。」
でも危なくないんですか、と付けくわえた。
「まあね。目が見えないから、サポートしてもらわないとケガだらけだよね。でも、好きなんだ。」
「あ、そ、そうですか。」
何だか照れるな。
と思っていると、チャイムが鳴った。
「あ、そろそろ帰らなきゃですね。」
私がイスから立ち上がると、先輩も立ち上がった。
先輩を支えながら部室を出ると、バッタリとハルヒに出会ってしまった。
「あ、は、ハルヒ。」
何だかドキマギしてしまう。
でもハルヒは普通の様子で「おー。おわったの?」と聞いてきた。
本当に意識されてないんだな。
そう思うと悲しくなってきた。
「う、うん。ハルヒも?」
相変わらず私の片想いなんだな。私ばっかりドキドキしてる。
「えっと…」
ハルヒが言いかけたところで、背後から足音が聞こえた。
芽衣ちゃんだった。
げ、今一番会いたくなかった…。
それでも構わず、芽衣ちゃんはこちらへやってきた。
「あ、綾!」
芽衣ちゃんはハルヒを無視して、私の方へやってきた。
で、芽衣ちゃんはハルヒのことを意識してない。
ハルヒの方を見ると、頬を染めていた。
はあ、とため息をつく。
いいよ、協力してあげる。
2人は大事な友だちだから。
「私もう行くね。」
そう言うと、私は先輩を引き連れ、2人を残した。



