学校の敷地に左右の頭髪が斜め上に尖って伸びている黒服の男が立っている。手にはネコの人形を持っている。そしてそれをチューリップやヒアシンスなどが咲いている花壇の近くに置くと、茂みに隠れてしまった。昼休みになると女生徒たちが解放感に包まれて校庭に出てきて遊んでいる。

するとある女生徒が
「あっ、猫だ、かわいい。」
と言ってその人形を抱き上げた。

「何だ、猫かと思ったら人形じゃないの。でもかわいいから教室に持って行こっと。」
その人形を教室に持っていくと、女子は可愛い猫が好きなので、たちまちクラスの人気者になった。それから2、3日したある日、体育の授業で教室はもぬけの殻だった。

すると猫人形がウインウインという音を発したかと見えた次の瞬間、手足が伸びて顔だけが猫の人間型ロボットになってしまったのだ。

「俺はシャープペンの芯を集めるために作られたロボットだ。俺のボスはシャープペンの芯を大量に集めて巨大なロボットを作ろうとしている。そのために俺は生徒たちがいない間に芯を片っ端からいただくのだ。」

その時窓の外に蝶々が羽ばたいていた。だがこれは普通の蝶々ではない。爺が作った蝶々型アンドロイドのパピヨンちゃんなのだ。パピヨンちゃんは小さなボディーに地球上の科学をはるかに上回る、高度なアルテミス星の技術の粋を尽くした超小型メカが詰め込まれている。

何とその小さな頭には人間と同じように考えたり判断したりすることのできる超小型電子頭脳まで埋め込まれているという優れものなのだ。パピヨンちゃんは、教室で行われていることやロボットのつぶやきから不正が行われていると判断し、そのことをデイジーにテレパシーした。

 その頃デイジーは数学の授業中だったが、急にパピヨンちゃんからのテレパシーがきたのでそれを解読した。内容を理解すると、彼女は
「先生、お腹が痛いのでお手洗いに行っていいですか?」
「もちろん、どうぞ。」

彼女は急いでロボットのいる教室へ行った。教室を覗くとロボットはそれぞれの机上にある筆箱の中のシャープペンから芯を抜き取り、口の中に放り込んでいる。

「うへへへ、この学校の生徒はよく勉強するからたくさん芯があるぞ。うまい、うまい。」
「あなた、そこで何をしてるの?」

「俺は食事の邪魔をされるのは大っ嫌いなのだ。無礼者め!頭にきたぞ!気絶しろ!」
と言って両目から黄色い光線が発射され、デイジーの方へとんでいく。しかし彼女は全く驚かず、腕を組んだまま立っている。

光線が彼女に近づいた時、急に彼女の全身を花柄のバリアーが覆った。フラワーバリアーの魔法だ。気絶光線はバリアーに撥ね返され、ロボットに当たってしまった。

「うわー、しまった、反射された気絶光線を浴びてしまった。電子頭脳が壊れてしまった。」ロボットは煙を吹きながら倒れてしまった。