【スピンオフ1】

『聖女は結婚なんて望んでませんっ!(でも断り切れてませんっ!)』
―後日談・王女クラリス編―

王国は平和になった。
魔王はいない。戦も終わった。
だからこそ、王女クラリスには“最後の戦い”が残っていた。

――そう、「聖女ルクシアとの結婚」である。

第1話:寝込みを襲ってもダメなんです!
ルクシアの部屋。
カーテンを閉じた薄暗い空間。ぬいぐるみと毛布に包まれた寝姿。

クラリス「……ああ、寝顔が尊い……結婚しよ?」

ルクシア「(寝たふり中)……ダメです。寝ててもダメです」

クラリス「!? 聖女様、寝言で拒否されました!?」

モフたん「にゃー(警備レベル警戒:最大)」

第2話:王国議会 vs 聖女の睡眠欲
クラリスは王国議会にて、こう主張した。

クラリス「国政を安定させるためにも、聖女との婚姻は不可欠です!」

老議員「むしろ国政の前に、あの子を起こせる術を探したほうがよい」

国王「我が娘よ、聖女を起こせたら婚約を許そう」

クラリス「最難関クエスト!?!?」

第3話:そしてプロポーズは再び…
布団の中でうとうとするルクシアの手をそっと握り。

クラリス「私は、あなたを守りたい。名前だけでも、婚約者にしてくれませんか」

ルクシア「……それってつまり、布団のバリアの外に出て……?」

クラリス「外には出なくていいです!一生一緒に寝てください!!」

ルクシア「わかった。じゃあ……結婚は、“仮”で……むにゃ……」

クラリス「仮でも幸せですーーーーっ!!!」

【スピンオフ2】

『魔王ザグレオス、今さら人間界に転職希望!?』
―ザグレオスの意外といい奴スピンオフ―

――敗北した魔王、ザグレオス。

彼は今、ある挑戦をしていた。

「ようこそ! お仕事体験村・人間社会コースへ!」
「おいおい……俺に人間の常識が通用すると思うなよ?」
第1話:コンビニ勤務、爆誕
ザグレオス「いらっしゃいませーー!!!」

客「でかッ!? 筋肉すごッ!?」

ザグレオス「レジ打ちは苦手だが、袋詰めには自信がある!」

→トングがへし折れる
第2話:保育園にて
園児「おじちゃん、だっこー!」

ザグレオス「よーし、まとめて面倒見てやるぞ!!」

→12人同時に抱っこして空を飛ぶ
先生「今のところこの園で一番人気です」

第3話:聖女と偶然再会
ルクシア「あ、配達のお兄さん……魔王じゃん」

ザグレオス「今は“バイトリーダー・ザグレオス”だ」

ルクシア「社会に馴染んでる……!? っていうか宅配で世界征服とか狙ってないよね!?」

ザグレオス「安心しろ、今は睡眠第一主義だ」

ルクシア「じゃあいいや」

【スピンオフ3】

『娘が世界を救って帰ってきた話』
―ルクシア母の育児記録編―

「私の娘は、世界を救ってもずっとパジャマです――」
聖女ルクシアの母・イレーネが語る、育児という名の戦い。

第1話:ルクちゃんは引きこもり体質
赤ん坊時代から、布団がないと泣き止まなかった。
幼稚園の遠足もお昼寝時間だけ参加。
“聖女に選ばれた”と聞かされた日も……

母「この子が!? 寝てばっかりなのに!?」

聖堂騎士「寝てる間に神託を受けたらしいです」

第2話:世界を救って帰ってきた夜
母「おかえり、ルクちゃん」

ルクシア「……ただいま……」

母「で、どうだった? 魔王は?」

ルクシア「……倒した。眠い。寝る」

母「よし、スープ作ってから寝なさい」

ルクシア「……うん。……ありがとう」

母(この子、本当に世界救ってきたのね……でも本質は、ただの娘だわ)

第3話:娘の婚約者(?)が増えすぎた件
母「王女、勇者、天才魔術師、魔王、なにこのモテ期?」

ルクシア「いらない」

母「でも本命、王女さんでしょ?」

ルクシア「ちが……わからない……眠い……」

母(あら、顔が赤いわね)

大団円・ラストエピソード

『そして、ふたりで眠る日』
ある日。
世界が平和で、誰も戦っていない、特別な朝。

ルクシアの寝室。
布団の中に、ふたりの姿。

クラリス「結婚式、延期でもいいですよ。あなたが望む限り」

ルクシア「うん。ありがとう。でも……」

クラリス「でも?」

ルクシア「布団の中なら、……ずっと一緒にいてもいいかも」

クラリス「……はい!」