「森さん、
トワくんはまったくもって健康ですよ。同世代の子たちにくらべてやや身長は低めですが、そんなことは問題ではありません。
子どもにとって大事なのは、毎日3食おいしくて栄養のあるものを食べて、きれいなお風呂に入って、きれいな服を着、お昼寝と夜はぐっすり眠ることですから」
土田先生が白いデスクトップパソコンのカルテを見、それからこちらを見てニコッとほほ笑む。人好きのしそうな笑顔だった。

「俺……私は……
トワにちゃんといろいろできているのでしょうか」
俺は、早く遊びたくてじたばたするトワを抱きしめながらおずおずと先生にそう聞いた。
「森さんは十分よくやっていますよ。毎日、毎時間、毎秒、トワくんのために。
でも、子育てはひとりではできません。家族で、親戚で、地域の方々や行政、保育園・幼稚園と協力しなければ」
「……」
「もし、よろしかったら、
一度、保健師のカウンセリングを受けてみませんか?」
「……いえ、今は」
「そうですか。
では、何かあったらすぐご連絡くださいね。
じゃあ、トワくん、またね」

土田先生がひらひらと右手を振ると、トワは不思議そうに首をかしげ、
それから、
「ふれ!」
と、元気よく言って、前歯の2本抜けた顔でニコオッと笑った。