朝日野中学校。

どこにでもあるような、普通の公立中学校。

ただし、1年A組というクラスは、荒れていた。

なぜなら、“カースト投票“があるからだ。

カースト投票とは、クラスでの立ち位置を決める、くじ引きのこと。

このクラス独自のものであり、他のクラスではないらしい。

くじには、A、B、Cがある。

Aは一番の権力者であり、先生も逆らえない。

Bは平凡。

Cは最低。

あたし、武井真白(たけいましい)は、このクラスになってから、ずっとCを引き続けている。

対して、あたしの親友、紗奈(さな)は、ずっとAを引いている。

***

「真白、帰ろ。」

学校終了のチャイムが鳴るのと同時に、紗奈が声をかけてくる。

「…うん。」

本当は1人で帰りたかったけど、仕方ない。

イスにかけていたリュックを背負うと、紗奈の方へ行った。

「今日さ、カフェに寄ってかない?」

校門を出た辺りで、紗奈が言った。
本当は今日はまっすぐ家に帰りたかったけど、断ったら関係が崩れそうで怖い。
「…いいよ。」

「どうしたの、真白?」

「え?」

「なんか顔が暗いよ。」

そう言って、顔を覗き込んでくる紗奈。
その顔は、いつ見ても美人だ。

白く透き通っている肌に、バッサリと長いまつ毛、大きな瞳。

あたしとは大違いだ。

「…無理しないでね。」
紗奈はあたしの顔から離れると、つぶやいた。

「…うん。」

この世界、無理しなかったらやっていけない。
分かっているはずなのに、紗奈の言葉で気が狂う。

「今日はやっぱカフェ寄らない。」

突然の紗奈の発表に、あたしは驚いた。

「え?何で?」

「だって、真白が行きたくなさそうなんだもん。」

「…そ、そんなわけないよ」

だけど、気遣ってくれるのは嬉しい。
やっぱり最高の親友だ。