「起立。…さようなら」


日直さんの号令に、さようなら。とクラスの皆で言う。
とたん、クラスの皆が二年二組から出ていく。

皆…部活かな。


「桃葉さんっ」


一人、まだ途中だった帰り支度をしていると、自分の名字を呼ばれた。


「また明日…じゃなくて、また来週っ」


声をかけてくれたのは、森七菜さん。

昨日彼女の友達と色々あって、それから声をかけてくれるようになったんだよね。

今までまた来週なんて言われたことなかったから、じーんと感動する。


「…うん。また来週っ。」


手をふると、森七菜さんはえへへっと笑って、男子と部活へ出かけていった。

確か…バトミントン部だったっけ?

男子と一緒に廊下歩くなんて…私には難易度が高すぎるっ…!

あれがモテる女子と言うんだ、多分。


「ゆあ?」


一人で尊敬していると、夏波くんに声をかけられた。


「今日は部活ないのか?」


私はその質問に、ふふっと微笑む。

そう、今日…金曜日は、家庭科部はお休みなんだよね。


「うんっ。夏波くんは何するの?」

「俺は…人探し」


夏波くんの答えに、「そっか。」と言って…はっとする。

今日こそ…人探し、手伝わないと!


「な、夏波くん、今日、私も手伝うよっ」


そろそろ手伝わないと、約束が成立しないもんねっ…!

夏波くんの瞳が、私の言葉を聞いてきらめいた。


「本当か?ゆあ、今日手伝ってくれる?」

「もちろんっ。」


ぐっとガッツポーズをして見せると、夏波くんが嬉しそうに微笑んだ。

なんか…喜んでくれてるみたい?

その笑顔に、きゅんっと心臓が高まる。


「じゃ、いつもの空き教室行こ。」


夏波くんが、そっと私の手を取る。

そういえば…夏波くんは、手を繋がれても平気だな。

他の男子は、会話することもちょっぴり苦手なのに…。


「ゆーあ。」


夏波くんは特別なのかな。と、思っているとガララと教室のドアが開いた。

私はその相手を見て、笑顔になる。


「夕くんっ」

「昨日はありがとね、ゆあ。」

「うん!でも、私の責任でもあるから…お礼を言われることでもないと思う。」

「ゆあは、お人好しすぎ。」


にっと笑い合う私たちを見て、夏波くんが呆然と見る。


「え…そんな仲良かったっけ…?」


そんな夏波くんを見て、夕くんがなぜか得意気に微笑む。


「別に?もとからこうやと思うけど。」


ふっと笑ったあと、夕くんは夏波くんと私が手をつないでるのを指さした。


「また変な噂がゆあにつくから、やめてくれん?ゆあは俺の彼女なんだけど。」

「は?あくまでウソだろ。」


な、なんか、二人の間に火花がちってる気がする…。

急にどうしたんだろ…?

私は意味が分からず、苦笑いするしかない。


「ま、まぁまぁ…。空き教室、行こっ?」


なだめると、しぶしぶと言うように二人は張っていた気を解く。


「今日は人探し、手伝ってくれるの?」


夕くんからの質問に、うんっと頷く。

すると夕くんは、ふわっと優しく微笑んだ。


「ゆあと長く一緒にいれて、嬉しい。」


夕くんのあまりにも直球な言葉に、心臓がドクンっと跳ねる。


「夕。お前、ゆあのこと…」


夏波くんが夕くんをまた睨みつける。

ほ、ホントに今日の夕くん、どうしちゃったんだろう…。


「別に何でもないよ。ゆあ、行こ?」

「う、うんっ。」


夕くんに左手を引っ張られ、教室を出る。

右手は、夏波くんとつないだまま。

まだ廊下に残っていた生徒が、きゃぁっと声をあげた。

私はなるべく顔をふせながら、夕くんのことを考える。

本人が何でもないって言ってるなら、何でもないのかな…?

でも…前との態度が、全然違う気がする…。

私の気のせいなのかな…?