「ねえ、ここでお昼食べていーい?」
飯田さんはびっくりとした表情で頭を縦にふった。
「村山さん。なんで?」
……なんでってなに?
ちょっと言葉足らずな気がする……。
この場合のなんではここに来た理由?だよね。
そんなことを一瞬で考えた私は、さらっと質問を答えてみた。
たくさん脳内会議してるのを内緒に……。
「飯田さんと話してみたくて」
そこから、結構会話が弾んだ。
飯田さんの価値観が素直にかっこいいと思った。
いいな、そんな風に生きれて。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうもので、気がついたらチャイムが鳴った。
「ねえ村山さん?下の名前なんていうの」
「りつ。凛月っていうの」
「凛とした月って綺麗な名前だね。あたしめっちゃ好きだよ」
どうして漢字は分かるんだろう。
ちょっとだけ不思議だったけど名前を好きと言ってもらえて嬉しい気持ちでいっぱいになった。
私もこの名前が大好きだ。
大切な、唯一の親にもらった最初のプレゼントだ。
「私は愛菜って名前すごく可愛いと思う!」
「あたしの名前知ってたんだ」
「知ってるに決まってるよ!だって入学式の日からすごいかっこいいなって思ってたし。さ、授業行かないと。愛菜も来る?」
無意識に苗字じゃなくて名前を読んでいた。
「……名前。ありがとう、気が向いたら行く。また来てね、すごい楽しかった」
「気が向いたら行く、は来ないやつじゃん!…時間やばい!またね、私も楽しすぎた!」
そう伝えて私は走って教室まで戻った。


