俺は中学受験をして、私立の学校へ通っていた。
生まれたときに十歳まで生きられないと言われた俺は、小さいころから親父に過保護なくらい色んな制約をつけられて生きてきた。
小学校の低学年ごろまでは入退院を繰り返していたから、学校では俺の心臓のことは有名で、俺は身体の弱い子として扱われてきたことが不愉快だった。
中学は絶対にこの心臓のことを知らない人が通う私立へ通いたいと思っていた。だから、この辺りではそれほど盛んではない中学受験をして、地元の友達のいない中学校へ行くことにしたのだ。
命の期限だった十歳のころを境に体力もついてきたからか、親父もその頃から口うるさく言わなくなっていた。電車に乗って私立中学へ通うことも、心配そうではあったが反対はされなかった。
俺はこのまま調子よくなっていくのだと思っていた節もある。
なぜか俺の受験に付き添うように晴と瞳も同じ学校を受験して、三人一緒に私立中学へ入学した。
中学では二人以外は俺の身体のことを知っているヤツはいなくて気が楽になった。
だからと言って運動ができるまで回復したわけでも無く、俺は学校ではいつもダルそうに、やる気無さそうに振舞っていた。
本当に調子が悪いこともあったが、小学校のころのように心配されるのもウザくて、軟弱に見られたくも無かったのだ。
同級生たちには俺が体育の授業に出ないのも、ダラダラと行動しているのも、ただ反抗心の強いやる気のない生徒だという目で見られていった。
実際に体育は見学ではなくサボっていた。教室移動も面倒だからダラダラ移動して、遅刻しても気にしなかった。心臓が弱いのを理由に、俺は本気でダラダラとやる気なく過ごしていたのかもしれない。
その日は最後の授業が体育だった。
俺はいつも通りサボって保健室に行っていた。養護教諭は俺の心臓のことは知っていたから、調子が悪いと言えば起きるまでずっと寝かせてくれる。
その日も、放課後のホームルームが終わっても起こされることは無く寝過ごした。
「いつまで寝てんだよ、帰るぞ」
そう言って起こしたのは、養護教諭ではなく晴だった。
「ああ、もうこんな時間か」
時計を見上げると、もう下校時間を大幅に過ぎていた。昨日遅くまでネットでゲームをしていたのが響いたな、などと思った。
「おまえさ、いい加減に心臓のこと、中学でも話した方がいいと思うぞ」
真顔で晴に言われたが、俺にはそんな気は無くて軽く受け流していた。
「このままだと、どんどん浮いていくだけだ」
「別にいい。小学校のころだって浮いていただろ? 軟弱モノ扱いされるくらいなら、今みたいな浮き方の方がマシだ」
「けど、せっかく受験して入ったのに」
「うるせえな、先生たちは知ってんだから、それでいいだろ?」
晴が心配しているのは知っていたが、正直言って俺にはうっとおしいだけだった。せっかく俺のことを誰も知らない所へ行きたかったのに、という想いも大きくて。
晴も普段はそんなことは滅多に言わなかったから、あの日は何か予感があったのかもしれない。
生まれたときに十歳まで生きられないと言われた俺は、小さいころから親父に過保護なくらい色んな制約をつけられて生きてきた。
小学校の低学年ごろまでは入退院を繰り返していたから、学校では俺の心臓のことは有名で、俺は身体の弱い子として扱われてきたことが不愉快だった。
中学は絶対にこの心臓のことを知らない人が通う私立へ通いたいと思っていた。だから、この辺りではそれほど盛んではない中学受験をして、地元の友達のいない中学校へ行くことにしたのだ。
命の期限だった十歳のころを境に体力もついてきたからか、親父もその頃から口うるさく言わなくなっていた。電車に乗って私立中学へ通うことも、心配そうではあったが反対はされなかった。
俺はこのまま調子よくなっていくのだと思っていた節もある。
なぜか俺の受験に付き添うように晴と瞳も同じ学校を受験して、三人一緒に私立中学へ入学した。
中学では二人以外は俺の身体のことを知っているヤツはいなくて気が楽になった。
だからと言って運動ができるまで回復したわけでも無く、俺は学校ではいつもダルそうに、やる気無さそうに振舞っていた。
本当に調子が悪いこともあったが、小学校のころのように心配されるのもウザくて、軟弱に見られたくも無かったのだ。
同級生たちには俺が体育の授業に出ないのも、ダラダラと行動しているのも、ただ反抗心の強いやる気のない生徒だという目で見られていった。
実際に体育は見学ではなくサボっていた。教室移動も面倒だからダラダラ移動して、遅刻しても気にしなかった。心臓が弱いのを理由に、俺は本気でダラダラとやる気なく過ごしていたのかもしれない。
その日は最後の授業が体育だった。
俺はいつも通りサボって保健室に行っていた。養護教諭は俺の心臓のことは知っていたから、調子が悪いと言えば起きるまでずっと寝かせてくれる。
その日も、放課後のホームルームが終わっても起こされることは無く寝過ごした。
「いつまで寝てんだよ、帰るぞ」
そう言って起こしたのは、養護教諭ではなく晴だった。
「ああ、もうこんな時間か」
時計を見上げると、もう下校時間を大幅に過ぎていた。昨日遅くまでネットでゲームをしていたのが響いたな、などと思った。
「おまえさ、いい加減に心臓のこと、中学でも話した方がいいと思うぞ」
真顔で晴に言われたが、俺にはそんな気は無くて軽く受け流していた。
「このままだと、どんどん浮いていくだけだ」
「別にいい。小学校のころだって浮いていただろ? 軟弱モノ扱いされるくらいなら、今みたいな浮き方の方がマシだ」
「けど、せっかく受験して入ったのに」
「うるせえな、先生たちは知ってんだから、それでいいだろ?」
晴が心配しているのは知っていたが、正直言って俺にはうっとおしいだけだった。せっかく俺のことを誰も知らない所へ行きたかったのに、という想いも大きくて。
晴も普段はそんなことは滅多に言わなかったから、あの日は何か予感があったのかもしれない。