【柱】高校・校庭・ペアイベント終了間際

【ト書き】
夕陽が校庭を赤く染める中、ペアイベント「目隠し宝探しゲーム」の制限時間が刻一刻と迫っていた。各ペアが次々と宝を見つけ、歓声を上げる中——。

【ト書き】
未だに宝を見つけられずにいるのは、桜木八重と白波椿ペアだった。

【八重】
「もう無理!! 私、こんな状態でどうやって探せばいいの!? 」

【椿】
「大丈夫、最後のチャンスだ。俺を信じて。」

【ト書き】
これまでの流れからして、椿を信じるのはかなりのリスクである。しかし、今はそれ以外に方法がない。

【八重】
「……わかった。最後までやるしかないね!」

【ト書き】
覚悟を決めた八重は、椿の指示通りに足を動かす。周囲ではクラスメイトたちが固唾をのんで見守っていた。

【椿】
「そのまま3歩進んで、右に1歩。あと少し……。」

【ト書き】
八重は慎重に進む。そして——。

【八重】
「え? なんか触った……これって——」

【モブ生徒A】
「おおおお!! 見つけたーーー!!」

【ト書き】
その瞬間、笛の音が鳴り響く。制限時間ギリギリで、八重はついに宝を見つけ出したのだった。

【モブ生徒B】
「すごい! まさか間に合うなんて!」

【ト書き】
歓声があがる中、八重は地面に膝をつき、深いため息をついた。

【八重】
「も、もう二度とやりたくない……!」

【椿】
「えー、いいコンビだったのにな。」

【ト書き】
余裕たっぷりの椿に、八重は目隠しを外してジト目を向けた。

【八重】
「いや、どこが!? 私、何度も危うく事故るところだったんだけど!!」

【モブ生徒C】
「でも、最後の誘導は完璧だったよね?」

【モブ生徒D】
「うん、白波くんの指示、最後はすごかった!」

【ト書き】
周囲の生徒たちが感心する中、椿は満足げに微笑む。

【椿】
「ほらな? 俺を信じてよかっただろ?」

【八重】
「くっ……悔しいけど、最後だけは認める……!」

【ト書き】
そんな二人を見ていた瑠奈が、ふっと微笑む。

【瑠奈】
「なかなかいいコンビだったわね。でも——。」

【ト書き】
瑠奈は少しだけ近づき、八重を見つめる。

【瑠奈】
「次のイベントでは、私があなたの代わりに白波くんと組むわ。」

【ト書き】
さらなる宣戦布告のような一言に、八重は反射的に椿を見る。

【椿】
「うーん、それはどうかな?」

【八重】
「……え?」

【ト書き】
椿は余裕の笑みを浮かべながら、どこか意味深な言葉を口にする。

【椿】
「だって俺、八重以外と組む気ないし。」

【ト書き】
突然の発言に、周囲の生徒たちがざわつく。

【モブ生徒E】
「ちょ、何その意味深発言!?」

【モブ生徒F】
「これ……完全に幼馴染ルート確定じゃない!?」

【ト書き】
騒ぎが大きくなる中、八重は思わず椿を睨みつける。

【八重】
「ちょ、待って!? それってどういう意味!?」

【ト書き】
しかし、椿は答えず、ただ微笑むだけだった。

【ト書き】
こうして、波乱のペアイベントは終了したが——。

【ト書き】
八重の高校生活は、ますます予測不可能なものになりそうだった。

【柱】高校・校長室・放課後

【ト書き】
夕方の校舎。生徒たちが下校し、日常の喧騒が徐々に静まっていく中、校長室の奥では穏やかながらも重みのある会話が交わされていた。

【ト書き】
机の上には分厚い書類の束と、一台のタブレット端末。その画面には「リアル恋愛ゲーム運営管理システム」の文字が映し出され、複数の生徒の名前がリアルタイムでデータ処理されている。

【???】
「順調に進んでいるようですね。」

【校長】
「ああ、例年になく盛り上がっている。今年のペアイベントは予想以上の反響だ。」

【ト書き】
校長は手元の報告書に目を落としながら、満足げに頷いた。書類の上部には「リアル恋愛ゲーム学内進捗レポート」と記されており、詳細なデータが並んでいる。

【???】
「しかし、特定のペアに関するデータが異常値を示しています。特に——」

【ト書き】
スーツ姿の男が指で端末の画面をスクロールしながら、ある名前に視線を留める。

【???】
「白波椿と桜木八重。彼らのエンゲージメント率が異常に高い。通常の発展速度を大幅に超えているとアルゴリズムが判断しています。」

【校長】
「ふむ……それだけ話題になっているということか。生徒たちが自発的に動いているなら問題はない。」

【???】
「ですが、このまま『幼馴染ルート』が独走しすぎると、他のシナリオに影響を及ぼす可能性があります。」

【ト書き】
静かな室内に、軽くページをめくる音が響く。机の向かいに座っていた別の人物が口を開く。

【???】
「リアル恋愛ゲームは“公平な選択肢”を提供することが前提。特定のルートが強調されすぎるのは、バランスが崩れる原因になります。」

【校長】
「確かに。だが、干渉しすぎるのも問題だ。生徒たちの自然な恋愛模様こそが、この企画の魅力だからな。」

【???】
「では、軽く調整を加えますか? 例えば次のイベントで、ある程度新たな選択肢を——」

【ト書き】
その言葉を遮るように、校長が手を上げる。

【校長】
「今は様子を見る。彼らの動きを観察してから判断しよう。」

【ト書き】
端末の画面には、白波椿・桜木八重・二階堂瑠奈の名前がハイライトされていた。その横には、「異常値検出」の赤い警告マークが点滅している。

【柱】高校・廊下・放課後

【ト書き】
その頃、何も知らない八重は、理央と並んで廊下を歩いていた。夕焼けが窓から差し込み、長い影を作る。

【八重】
「はぁー、やっとペアイベント終わった……もう、次のイベントはゆっくりさせてほしい……!」

【理央】
「いやいや、次はもっとすごいことになるかもよ? なんたって、この学校だからね。」

【八重】
「え、ちょっと何その不穏なフラグ!?」

【ト書き】
遠くの校舎の窓に、彼女たちを見下ろす影があった。

【???】
「さて、どう動くかな……?」

【ト書き】
リアル恋愛ゲームの運営側が動き始めたことを、八重はまだ知らない。