【柱】高校・昼休み・校庭

【ト書き】
青空が広がる校庭。生徒たちは「カップルポイントバトル」に熱中し、それぞれのペアがポイントを稼ぐために奮闘していた。だが、その流れが徐々に変わり始める。

【ト書き】
桜木八重、白波椿、神崎玲司、そして二階堂瑠奈。彼らは、学校全体を巻き込んだ“ゲーム破壊計画”を静かに進行させていた。

【八重】
「いい? まずは生徒たちに、このゲームがいかにくだらないかを気づかせるのが第一歩!」

【椿】
「とは言っても、楽しんでる連中が多いからな。どうやって?」

【神崎】
「簡単さ。ゲームが面白くないって思わせればいい。つまり——ルールを徹底的に壊す。」

【ト書き】
八重たちは、ゲームのシステムを徹底的に無視する方法を考え、次々と実行に移した。

【柱】高校・昼休み・校舎内

【ト書き】
廊下では、モブ生徒たちがゲームの進行状況を話し合っていた。

【モブ生徒A】
「おかしいんだけど……なんか、突然ゲームが変な方向にいってない?」

【モブ生徒B】
「そうそう! なんであちこちで“おかしなペア”が組まれてるの!? しかも、椿と八重がバトルそっちのけで“反ゲーム派”として宣伝活動してるとか!」

【ト書き】
八重たちは、まるで運動会のように“ふざけたペアミッション”を作り出し、公式のイベントとはまったく関係のないゲームを広めていた。

【理央】 「いい感じね。生徒たちの間に“ゲームの真面目さ”が崩れ始めてるわ。」

【ト書き】
こうして、生徒たちが本来のゲームのルールに違和感を持ち始めたころ、ついに運営側が動き出した。

【柱】高校・放課後・校長室

【ト書き】
運営本部である校長室では、モニターに映るゲームデータが異常値を示していた。

【???】
「まずい……プレイヤーの自主行動が増えすぎて、ゲームの統制が取れなくなっている。」

【校長】 「……桜木八重が動いたか。」

【???】
「このままでは、リアル恋愛ゲームの存在意義が……。」

【ト書き】
しかし、八重たちの動きは止まらない。

【柱】高校・放課後・校庭

【ト書き】
校庭の中心に立つ八重。彼女は生徒たちの前で大きく息を吸い込み、堂々と宣言した。

【八重】
「みんな! もう気づいたでしょ!? このゲームなんて、ただの運営の思惑でしかない!! 本当に好きな人がいるなら、運営の指示なんか関係ないでしょ!!」

【モブ生徒C】
「……たしかに。」

【モブ生徒D】
「俺、ゲームのルールに従うより、自分で決めたいかも……。」

【ト書き】
生徒たちの間に広がる疑問。運営に決められた恋愛をするのではなく、自分の気持ちを大事にしたいという考えが、少しずつ芽生えていく。

【神崎】
「……成功だね。」

【椿】
「ははっ、やっぱり八重は面白いな。」

【ト書き】
そして、ついに運営側が“ゲームの終了”を発表せざるを得なくなった。

【校内放送】
『本日をもって、リアル恋愛ゲームを正式に終了とする。』

【ト書き】
その瞬間、校内に歓声が響き渡った。長年続いていたシステムは、生徒たちの意思によって崩壊したのだ。

【八重】
「……やった!!」

【ト書き】 八重は大きくガッツポーズをした。その横で、椿も、理央も、神崎も、それぞれのやり方で笑っていた。

【ト書き】
——こうして、リアル恋愛ゲームは終焉を迎えた。

【柱】高校・放課後・校長室

【ト書き】
リアル恋愛ゲームの終焉が正式に発表された翌日。学校はいつものように平穏を取り戻し、生徒たちは自由に好きな相手と過ごす時間を楽しんでいた。

【ト書き】
しかし、そんな中、桜木八重はたった一人、校長室へと呼び出されていた。

【八重】
「……なんで私が?」

【ト書き】
緊張した面持ちで校長室の扉をノックし、ゆっくりと中へ入る。そこには、校長ともう一人の人物が座っていた。

【ト書き】
その男はスーツを着た端正な顔立ちの青年だった。黒髪を整え、知的な雰囲気を漂わせながら、穏やかな笑みを浮かべている。

【???】
「やあ、桜木八重さん。ついに会えたね。」

【八重】
「……誰?」

【ト書き】
八重が警戒するように目を細めると、青年は軽く肩をすくめた。

【天城】
「自己紹介が遅れたね。僕は天城蒼一(あまぎ そういち)。この学園の創設者であり、リアル恋愛ゲームの統括責任者——いわば“黒幕”というやつかな。」

【八重】
「はぁ!? あんたが学園の創設者!? こんなに若いのに!?」

【天城】 「まあね。でも、この学園を設立し、リアル恋愛ゲームのシステムを作り上げたのは、本当に僕だよ。」

【ト書き】
八重は信じられないという表情を浮かべる。学園の創設者といえば、もっと年配の人物を想像していた。

【八重】
「じゃあ、なんでこんなことに?」

【天城】
「この学園の目的は、恋愛の“最適化”を目的とした教育プログラムだ。恋愛の成功率を高めることで、卒業後の結婚率を向上させ、社会的な安定を図る……まあ、そんな大義名分があったわけだ。」

【八重】
「……嘘みたい。」

【ト書き】
天城の言葉を聞いて、八重は複雑な表情を浮かべる。学校が恋愛を管理し、人生の成功まで計画しようとしていたなんて、今までの常識では考えられないことだった。

【天城】
「でもね、桜木八重さん——君がすべてを壊してくれた。」

【八重】
「……え?」

【天城】
「君がリアル恋愛ゲームを拒否し、運営の仕組みを破壊し、生徒たちに“自分で恋愛を選ぶ自由”を取り戻させた。……いや、正確には、“恋愛は自由なものだ”という当たり前のことを思い出させてくれた、というべきかな。」

【ト書き】
天城は微笑みながら、ゆっくりと立ち上がる。

【天城】
「君の完勝だよ、桜木八重さん。運営側は、正式に恋愛ゲームの終了を決定した。」

【八重】
「……そりゃ、まあ……当然でしょ!」

【ト書き】
八重は胸を張り、堂々と答えた。彼女にとっては、ただ普通の高校生活を送りたかっただけ。でも、そのために全力で戦い、勝利を掴んだ。

【天城】
「……実は、君の行動を見ていて、僕自身も学んだことがある。」

【八重】
「え?」

【天城】
「恋愛に“最適解”なんてものはない。人は感情で動くものだし、誰とどんな風に恋に落ちるかなんて、誰にも分からないものなんだってね。」

【ト書き】
天城は皮肉っぽく笑いながら、椅子に腰を下ろす。

【天城】
「君に完敗したと、素直に認めるよ。」

【八重】
「……なんか、ちょっと拍子抜けかも。」

【ト書き】 八重は肩をすくめながら、校長室を後にする。廊下に出ると、待っていた椿、神崎、理央の三人がこちらを見ていた。

【椿】
「どうだった?」

【八重】
「黒幕の学園の創設者が降参したってさ。」

【理央】
「当然の結果だね。」

【神崎】
「これで、ようやく本当の意味で自由になれたね。」

【ト書き】
それぞれの想いを胸に、彼らは校門へと向かう。太陽が沈み、学校の一日は終わろうとしていた。

【ト書き】
——こうして、リアル恋愛ゲームは完全に幕を閉じた。