柱:学校・教室・朝の始業前
ト書き
朝の教室には、すでに登校してきた数人の生徒がいる。
窓際の席では、友達と雑談している者もいれば、静かに課題をこなしている者もいる。
教室内には、まだ少し眠気の残る穏やかな空気が流れていた。
そんな中、相川遥 は自分の席に座り、英単語の予習をしながら 小さくため息をついた。
遥(モノローグ)
「昨日の壁ドン作戦、見事に失敗だったな……」
「透をドキドキさせるどころか、私が返り討ちに遭うとか、どういうこと!?」
ト書き
ふと窓際に目を向けると、夏目透 が椅子に座って本を読んでいる。
朝の静かな時間、透がこうして一人で読書をしている光景は見慣れたものだった。
彼は授業が始まるぎりぎりまで本を読むタイプで、
周囲がざわついていても気にしない。
遥は、そんな透の様子を横目で見ながら 何気なく口を開く。
遥「ねえ透、今日、部活は?」
透「ない。」
ト書き
相変わらずの素っ気ない返事。
それでも、こうやって話しかけるのが “いつもの光景” だった。
遥はペンをくるくると回しながら、
机の上に置いていた 髪ゴムを手に取る。
柱:学校・教室・朝の始業前(席でのやり取り)
ト書き
遥は髪をひとつに結ぼうとゴムを伸ばし、
片手で髪を持ち上げたが——
指が、思うように動かない。
遥(モノローグ)
「……あれ、なんか手、つりそう……?」
ト書き
昨日の掃除当番で、ほうきを握りすぎたせいだろうか。
腕に力を入れると、指先がぎこちなく動き、
うまく髪を束ねることができない。
何度か試すものの、うまくいかず、
遥は 小さく舌打ちをした。
そんな様子を、
透は本から目を離さずに ちらりと横目で見ていた。
そして、
彼は 本を閉じ、静かに立ち上がる。
透「じっとしてろ。」
ト書き
遥が反応する間もなく、
透は 後ろから手を伸ばした。
するりと、透の指が遥の髪を束ねる。
ひんやりとした指先が 首筋に触れる。
遥(モノローグ)
「え、ちょっと待って待って待って!!」
「これ、普通に恋人ムーブなんだけど!!!」
ト書き
透は 無言のまま、器用にゴムを巻きつけていく。
遥は 急激に速くなる鼓動 を抑えられない。
遥(モノローグ)
「なんで透はこんなこと、サラッとできるの!? もっと照れたりしないの!?」
「いや、普通しないよね? 幼なじみで髪結ぶとか、何事!?」
ト書き
しかし、透の表情は変わらない。
むしろ、どこか落ち着いた様子 で、
淡々と髪を結っている。
遥の心臓は 全力疾走した後みたいにバクバク しているというのに。
透「はい、終わり。」
ト書き
ふっと手を離し、
結び終わった髪を 軽く引っ張る。
遥は呆然としたまま、
そっと 自分の髪に触れた。
遥「……え、なんかすごく綺麗に結ばれてるんだけど。」
透「そりゃ、妹によくやってたし。」
ト書き
その一言に、遥の心臓がギュッと縮こまる。
遥(モノローグ)
「妹……あ、そっか。そういうことか。」
「つまり、これも恋愛的な意味じゃなくて、ただの兄貴ムーブってこと?」
透「お前はほんと、昔から変わんねぇな。」
ト書き
遥の動きが ぴたりと止まる。
透は、何気ない調子で 続ける。
透「昔もこうやって、お前が髪結べなくて手伝ってたことあったろ?」
「結局、俺が手ぇ出さないとできねぇんだよな。」
ト書き
……まただ。
また、「幼なじみ」 って言葉で片付けられた。
透にとっては、
「昔と変わらない関係」 のままなんだ。
遥(モノローグ)
「……違う、私は変えたいのに……!」
ト書き
遥は、
内心の もやもや を 押し込めながら、
ぎゅっとスカートの裾を握る。
遥「……ありがと。」
ト書き
それだけ言って、
そそくさと荷物をまとめる。
透は ちらりと遥を見たが、
特に何も言わなかった。
柱:学校・教室・朝の始業前(透の視点)
ト書き
教室には、
徐々に登校してくる生徒たちが増えてきた。
透は 何気なく視線を向ける。
遥は、席に座りながら 窓の外をぼんやりと眺めていた。
しかし、その瞳はどこか 強い意志を秘めているように見えた。
遥(モノローグ)
「……もっと、透に意識させなきゃダメだ!」
「普通の『幼なじみ』じゃなくて、女として……!!」
ト書き
遥は、ぎゅっと拳を握りしめる。
そして、新たな作戦を思いつく。
遥(モノローグ)
「よし……! 次は 『他の男子と親しくする作戦』 で行こう!」
ト書き
ちょうどその時、
透が 何かを考えるように 遥の髪を じっと見つめた。
透(モノローグ)
「……昔から変わらない?」
「いや……本当にそうか?」
ト書き
透は微かに 眉を寄せるが、
すぐに 視線を逸らし、 本を開いた。
その後ろ姿を見送りながら、
遥は 改めて強く誓う。
遥(モノローグ)
「幼なじみルート……絶対に解放してやる!!!」
柱:学校・教室・朝
ト書き
朝の教室はいつも通りのざわめきに包まれている。
生徒たちが友達と話したり、スマホをいじったりしながら思い思いの時間を過ごしている中、
担任の先生が黒板の前に立ち、手を叩いた。
先生「えー、みんな席について。今日からこのクラスに転校してくる生徒を紹介する。」
ト書き
教室がざわつく。
数人の女子が「転校生!?」「どんな子かな?」と興味津々な様子で囁き合う。
先生「じゃあ、入ってこい。」
ト書き
扉が開き、ゆっくりと教室へ入ってきたのは、
軽く茶色がかった髪に、整った顔立ちの 佐伯亮太(さえき りょうた) だった。
スラリとした高身長に、爽やかな笑顔。
それだけで女子たちの間から「イケメン……!」という声が漏れる。
亮太「佐伯亮太です。よろしく。」
ト書き
軽く手を挙げながら、明るく、それでいてどこか軽い口調で自己紹介をする。
しかし、その目はどこか鋭さを秘めていて、
ただの人懐っこい男子というわけではないことを感じさせた。
遥(モノローグ)
「……転校生、めっちゃイケメンなんだけど。」
ト書き
遥は目を丸くしながら、ちらりと隣の 夏目透 の方を伺う。
しかし、透は相変わらず窓の外をぼんやりと眺めているだけで、
特に興味を示していない。
先生「佐伯の席は……相川の隣だな。」
ト書き
その言葉を聞いた途端、教室が一層ざわめく。
「いいな〜!」「隣とか羨ましい!」という女子たちの声が飛び交う中、
遥は内心で少し緊張しながら、亮太が自分の隣に座るのを見届けた。
亮太「よろしく、相川さん。」
遥「あ、うん! よろしくね!」
ト書き
明るく微笑む亮太に、遥もつられて笑顔を返す。
彼はどこかフレンドリーで、話しやすい雰囲気を持っていた。
柱:学校・廊下・昼休み
ト書き
昼休み。
遥は親友の 美咲 と購買で買ったパンを手にしながら、
教室へ戻る途中だった。
美咲「ねえねえ、遥。隣の席の転校生、めっちゃかっこよくない?」
遥「うん、確かにイケメンだったね。でも、まだあんまり話してないしなぁ。」
美咲「いやいや、あのルックスはずるいでしょ! 絶対モテるよ。」
ト書き
美咲が楽しそうに話していると、
後ろから軽やかな足音が近づいてきた。
亮太「相川さん。」
ト書き
振り向くと、そこには 佐伯亮太 の姿。
彼はにこやかな表情を浮かべながら、軽く手を挙げて遥に近づいてくる。
遥「あ、佐伯くん。どうしたの?」
亮太「いや、クラスで気になった子がいたから話してみたくてさ。」
ト書き
美咲が 「えっ、それって遥のこと!?」 と目を丸くするが、
亮太は何でもないような顔で続ける。
亮太「ねえ、相川さんって幼なじみと仲良いよね? あの、夏目くんだっけ?」
遥「うん、まあね。小さい頃からずっと一緒だし。」
ト書き
亮太は少し考えるようにしながら、
何かを確かめるような目で遥を見つめる。
亮太「そっかー。でもさ、幼なじみって、基本的に恋愛に発展しないよね?」
ト書き
一瞬、空気が止まる。
遥はぽかんとした表情になりながら、思わず聞き返す。
遥「え?」
ト書き
亮太は軽い調子で肩をすくめる。
亮太「だってさ、幼なじみって近すぎる関係でしょ? 家族みたいなもんだから、そこから恋愛に発展することって滅多にないっていうか。」
ト書き
遥は言葉に詰まる。
それって、まさに 透が言ってたことと同じ じゃないか!?
遥(モノローグ)
「ちょ、ちょっと待ってよ……! そんな簡単に決めつけないで!」
ト書き
その時、横からスッと影が差し込んだ。
透が、冷めた表情で立っていた。
透「…は?」
ト書き
短い一言。
それだけなのに、妙に空気がピリつく。
透「お前、何勝手なこと言ってんの?」
ト書き
透の声は低く、どこか棘がある。
それを感じ取ったのか、亮太は少し目を細め、楽しげに笑った。
亮太「お、もしかして、夏目くんは違うって思ってる派?」
透「……別に。」
ト書き
透は素っ気なくそう答えたが、その腕は無意識のうちに 遥の肩に触れかけていた。
遥はそんな透の動きに気づき、心臓が跳ねる。
遥(モノローグ)
「えっ……? 透、なんか機嫌悪い……?」
ト書き
亮太はそんな透を見て、さらに口元を緩めた。
亮太「へぇ……なるほどね。」
ト書き
その言葉の意味を測りかねるまま、
遥は透の横顔を見つめる。
彼の表情は無表情のはずなのに、どこか苛立ちが滲んでいた——。
ト書き
朝の教室には、すでに登校してきた数人の生徒がいる。
窓際の席では、友達と雑談している者もいれば、静かに課題をこなしている者もいる。
教室内には、まだ少し眠気の残る穏やかな空気が流れていた。
そんな中、相川遥 は自分の席に座り、英単語の予習をしながら 小さくため息をついた。
遥(モノローグ)
「昨日の壁ドン作戦、見事に失敗だったな……」
「透をドキドキさせるどころか、私が返り討ちに遭うとか、どういうこと!?」
ト書き
ふと窓際に目を向けると、夏目透 が椅子に座って本を読んでいる。
朝の静かな時間、透がこうして一人で読書をしている光景は見慣れたものだった。
彼は授業が始まるぎりぎりまで本を読むタイプで、
周囲がざわついていても気にしない。
遥は、そんな透の様子を横目で見ながら 何気なく口を開く。
遥「ねえ透、今日、部活は?」
透「ない。」
ト書き
相変わらずの素っ気ない返事。
それでも、こうやって話しかけるのが “いつもの光景” だった。
遥はペンをくるくると回しながら、
机の上に置いていた 髪ゴムを手に取る。
柱:学校・教室・朝の始業前(席でのやり取り)
ト書き
遥は髪をひとつに結ぼうとゴムを伸ばし、
片手で髪を持ち上げたが——
指が、思うように動かない。
遥(モノローグ)
「……あれ、なんか手、つりそう……?」
ト書き
昨日の掃除当番で、ほうきを握りすぎたせいだろうか。
腕に力を入れると、指先がぎこちなく動き、
うまく髪を束ねることができない。
何度か試すものの、うまくいかず、
遥は 小さく舌打ちをした。
そんな様子を、
透は本から目を離さずに ちらりと横目で見ていた。
そして、
彼は 本を閉じ、静かに立ち上がる。
透「じっとしてろ。」
ト書き
遥が反応する間もなく、
透は 後ろから手を伸ばした。
するりと、透の指が遥の髪を束ねる。
ひんやりとした指先が 首筋に触れる。
遥(モノローグ)
「え、ちょっと待って待って待って!!」
「これ、普通に恋人ムーブなんだけど!!!」
ト書き
透は 無言のまま、器用にゴムを巻きつけていく。
遥は 急激に速くなる鼓動 を抑えられない。
遥(モノローグ)
「なんで透はこんなこと、サラッとできるの!? もっと照れたりしないの!?」
「いや、普通しないよね? 幼なじみで髪結ぶとか、何事!?」
ト書き
しかし、透の表情は変わらない。
むしろ、どこか落ち着いた様子 で、
淡々と髪を結っている。
遥の心臓は 全力疾走した後みたいにバクバク しているというのに。
透「はい、終わり。」
ト書き
ふっと手を離し、
結び終わった髪を 軽く引っ張る。
遥は呆然としたまま、
そっと 自分の髪に触れた。
遥「……え、なんかすごく綺麗に結ばれてるんだけど。」
透「そりゃ、妹によくやってたし。」
ト書き
その一言に、遥の心臓がギュッと縮こまる。
遥(モノローグ)
「妹……あ、そっか。そういうことか。」
「つまり、これも恋愛的な意味じゃなくて、ただの兄貴ムーブってこと?」
透「お前はほんと、昔から変わんねぇな。」
ト書き
遥の動きが ぴたりと止まる。
透は、何気ない調子で 続ける。
透「昔もこうやって、お前が髪結べなくて手伝ってたことあったろ?」
「結局、俺が手ぇ出さないとできねぇんだよな。」
ト書き
……まただ。
また、「幼なじみ」 って言葉で片付けられた。
透にとっては、
「昔と変わらない関係」 のままなんだ。
遥(モノローグ)
「……違う、私は変えたいのに……!」
ト書き
遥は、
内心の もやもや を 押し込めながら、
ぎゅっとスカートの裾を握る。
遥「……ありがと。」
ト書き
それだけ言って、
そそくさと荷物をまとめる。
透は ちらりと遥を見たが、
特に何も言わなかった。
柱:学校・教室・朝の始業前(透の視点)
ト書き
教室には、
徐々に登校してくる生徒たちが増えてきた。
透は 何気なく視線を向ける。
遥は、席に座りながら 窓の外をぼんやりと眺めていた。
しかし、その瞳はどこか 強い意志を秘めているように見えた。
遥(モノローグ)
「……もっと、透に意識させなきゃダメだ!」
「普通の『幼なじみ』じゃなくて、女として……!!」
ト書き
遥は、ぎゅっと拳を握りしめる。
そして、新たな作戦を思いつく。
遥(モノローグ)
「よし……! 次は 『他の男子と親しくする作戦』 で行こう!」
ト書き
ちょうどその時、
透が 何かを考えるように 遥の髪を じっと見つめた。
透(モノローグ)
「……昔から変わらない?」
「いや……本当にそうか?」
ト書き
透は微かに 眉を寄せるが、
すぐに 視線を逸らし、 本を開いた。
その後ろ姿を見送りながら、
遥は 改めて強く誓う。
遥(モノローグ)
「幼なじみルート……絶対に解放してやる!!!」
柱:学校・教室・朝
ト書き
朝の教室はいつも通りのざわめきに包まれている。
生徒たちが友達と話したり、スマホをいじったりしながら思い思いの時間を過ごしている中、
担任の先生が黒板の前に立ち、手を叩いた。
先生「えー、みんな席について。今日からこのクラスに転校してくる生徒を紹介する。」
ト書き
教室がざわつく。
数人の女子が「転校生!?」「どんな子かな?」と興味津々な様子で囁き合う。
先生「じゃあ、入ってこい。」
ト書き
扉が開き、ゆっくりと教室へ入ってきたのは、
軽く茶色がかった髪に、整った顔立ちの 佐伯亮太(さえき りょうた) だった。
スラリとした高身長に、爽やかな笑顔。
それだけで女子たちの間から「イケメン……!」という声が漏れる。
亮太「佐伯亮太です。よろしく。」
ト書き
軽く手を挙げながら、明るく、それでいてどこか軽い口調で自己紹介をする。
しかし、その目はどこか鋭さを秘めていて、
ただの人懐っこい男子というわけではないことを感じさせた。
遥(モノローグ)
「……転校生、めっちゃイケメンなんだけど。」
ト書き
遥は目を丸くしながら、ちらりと隣の 夏目透 の方を伺う。
しかし、透は相変わらず窓の外をぼんやりと眺めているだけで、
特に興味を示していない。
先生「佐伯の席は……相川の隣だな。」
ト書き
その言葉を聞いた途端、教室が一層ざわめく。
「いいな〜!」「隣とか羨ましい!」という女子たちの声が飛び交う中、
遥は内心で少し緊張しながら、亮太が自分の隣に座るのを見届けた。
亮太「よろしく、相川さん。」
遥「あ、うん! よろしくね!」
ト書き
明るく微笑む亮太に、遥もつられて笑顔を返す。
彼はどこかフレンドリーで、話しやすい雰囲気を持っていた。
柱:学校・廊下・昼休み
ト書き
昼休み。
遥は親友の 美咲 と購買で買ったパンを手にしながら、
教室へ戻る途中だった。
美咲「ねえねえ、遥。隣の席の転校生、めっちゃかっこよくない?」
遥「うん、確かにイケメンだったね。でも、まだあんまり話してないしなぁ。」
美咲「いやいや、あのルックスはずるいでしょ! 絶対モテるよ。」
ト書き
美咲が楽しそうに話していると、
後ろから軽やかな足音が近づいてきた。
亮太「相川さん。」
ト書き
振り向くと、そこには 佐伯亮太 の姿。
彼はにこやかな表情を浮かべながら、軽く手を挙げて遥に近づいてくる。
遥「あ、佐伯くん。どうしたの?」
亮太「いや、クラスで気になった子がいたから話してみたくてさ。」
ト書き
美咲が 「えっ、それって遥のこと!?」 と目を丸くするが、
亮太は何でもないような顔で続ける。
亮太「ねえ、相川さんって幼なじみと仲良いよね? あの、夏目くんだっけ?」
遥「うん、まあね。小さい頃からずっと一緒だし。」
ト書き
亮太は少し考えるようにしながら、
何かを確かめるような目で遥を見つめる。
亮太「そっかー。でもさ、幼なじみって、基本的に恋愛に発展しないよね?」
ト書き
一瞬、空気が止まる。
遥はぽかんとした表情になりながら、思わず聞き返す。
遥「え?」
ト書き
亮太は軽い調子で肩をすくめる。
亮太「だってさ、幼なじみって近すぎる関係でしょ? 家族みたいなもんだから、そこから恋愛に発展することって滅多にないっていうか。」
ト書き
遥は言葉に詰まる。
それって、まさに 透が言ってたことと同じ じゃないか!?
遥(モノローグ)
「ちょ、ちょっと待ってよ……! そんな簡単に決めつけないで!」
ト書き
その時、横からスッと影が差し込んだ。
透が、冷めた表情で立っていた。
透「…は?」
ト書き
短い一言。
それだけなのに、妙に空気がピリつく。
透「お前、何勝手なこと言ってんの?」
ト書き
透の声は低く、どこか棘がある。
それを感じ取ったのか、亮太は少し目を細め、楽しげに笑った。
亮太「お、もしかして、夏目くんは違うって思ってる派?」
透「……別に。」
ト書き
透は素っ気なくそう答えたが、その腕は無意識のうちに 遥の肩に触れかけていた。
遥はそんな透の動きに気づき、心臓が跳ねる。
遥(モノローグ)
「えっ……? 透、なんか機嫌悪い……?」
ト書き
亮太はそんな透を見て、さらに口元を緩めた。
亮太「へぇ……なるほどね。」
ト書き
その言葉の意味を測りかねるまま、
遥は透の横顔を見つめる。
彼の表情は無表情のはずなのに、どこか苛立ちが滲んでいた——。