夏休み目前にして、千秋の家に課題をやりに来ていた。


「何で、この家でやってんの。」


千秋は回る椅子に座ってこっちを見ながらそんな質問を投げかける。


「夏休みの帰省どうするのかなって探り。一緒に帰ろうって誘いに来た。」

「いつ帰るつもりなの?今月いっぱいまでバイト入ってるからそれ以降なら休み取れるけど」

「じゃあ来月の頭に帰ろう」


そう言いながらノートパソコンのキーボードを指で叩いて、文字をひたすら並べていく。

夏休みの課題をこなすも中々身が入らず、こうして千秋の所に来ては監視してもらいながらやっている。

千秋に見ててと言っているわけでは無いけど。


「…来月の頭さ、花火大会あったよね」

「あー、毎年やるのだよね。」


地元ならではの花火大会が1年に1回開催される。

今年は行く気も無かったからすっかり忘れていた。


「今年誰かと行く?」

「ん~、行く人居ないし。今年は家で大人しくしてようかなって思ってた。三奈だって彼氏とかと行くだろうし。」

「なら、俺と行こ。」

「え?」


千秋の予想もしないお誘いに驚いた。

こんな風に誘ってきた事今までなかったし。


「何で、私と?」

「今まで彼氏とかと行って、一緒に行った事無いし、俺も今年行く人居ないけど、夏の醍醐味だから見ときたいし。駄目?」

「駄目?って…」


その聞き方が可愛くて思わずときめいてしまった。

千秋って時々こういう所がある。

普段大人っぽくて格好良いけど、可愛い所も沢山あって、私しか知らない千秋の一部分なんじゃないかって思う。


「ん!今年は一緒に行こう!」

「うん、約束。」


確かにこんだけ一緒に居るのに千秋と花火大会なんて行った事無かった。

いつも誘われてその人と行くから、タイミングが合わなかったのもある。

今年は、千秋と。