◯悠人の部屋、夜
紗代(思い出した。悠人の夢は獣医だ。)

紗代は食べ終えたみかんゼリーのカップをテーブルに置く
紗代は悠人に向けて手を合わせる

紗代「ごめん、悠人!悠人は獣医さんになるんだよね。」

悠人は顔を背ける

悠人「別にいい。もう諦めたから。」
紗代「なんで!?」
悠人「さっき言ったろ?色々あんだよ。高校出たら働くって決めてる。」

紗代(それはそうかもしれないけど、悠人の夢はどうなるの?)

紗代は顔を背けている悠人を見つめる
悠人は視線を下げている
紗代には寂しそうに見える

紗代「諦めちゃダメだと思う。」
悠人「仕方ねーよ。」

紗代は両手でテーブルを叩く、ダンッ!
プリンとゼリーのカップが揺れる
悠人は驚いて紗代の方を向く

紗代「そんなことない!方法なんてある!えっと、ほら!夜間の大学とかあるでしょ?社会人の大学生だっているし、働きながら勉強する人は沢山いると思う。諦めちゃダメだよ!あんなに優しい顔でニコニコしながら子猫ちゃんをさ………っ!」

紗代が話している途中で悠人は右手で紗代の口を塞ぐ
目を見開く紗代

悠人「それ以上言うな。」

紗代はコクコクと頷く
脅しのような雰囲気だけど、悠人の顔は少し赤くなっている

悠人「やっぱお前がいる高校来てよかったわ。」

笑顔の悠人を見て紗代も嬉しくなる

紗代「同じ高校だと思わなかったよ。受験の時いなかったからさ。」
悠人「俺、推薦だから。」
紗代「へ!?」

余裕そうな表情の悠人

悠人「頑張れって言っただろ?」
紗代(言われた……あの時既に悠人は合格が決まってたってこと!?)

白目になる紗代
くすくす笑う悠人

悠人「せっかくお前と同じ高校にしたのに、通えないと意味ねーじゃん?だからこの部屋借りた。」
紗代(なんでそんなこと言うのよ。それじゃまるで……)

【会いたかったって言われてるみたいだ──】

顔が赤くなる紗代
恥ずかしくて顔を俯ける

悠人「でも同じクラスになれるとは思わなかった。席も隣だし。無視されて傷ついたけどな。ははは。」

悠人は笑いながら俯く紗代の頭をぽんぽんする